三国機密48話、ずっと曹丕ちゃんをフッていた司馬懿がついに仕えた経緯と、その際の曹丕ちゃんの反応があまりにも大変な件など……諸々ネタバレ→
ざっくり背景事情ですが……
劉平の正体が、司馬家で育った「楊平」であることが曹氏方にバレつつあり、劉平ら漢室側の危機に。司馬懿も囚われて尋問され、司馬防ら、河内の司馬家にもまた危険が迫っていたころ。楊彪や唐王妃ら、機密に関与していた面々が、密かに曹操の暗殺を計画。官を辞する楊彪は、送別の宴に曹操を招き、そこで刺客のプロ・唐王妃が暗殺することに。しかし劉平と伏寿はそれを察知。伏寿は唐王妃を皇后の宮殿に招いて留め、劉平は楊家の宴に赴く。
この宴でもいろいろあって、結局、劉平と曹操は楊彪と三人で話し合い、劉平は状況を解決するために譲位すると申し出るが、館を出たところで、刺客が曹操を襲う。曹操は劉平が騙したと考えて批判。曹丕が応戦して手傷を負わせるも、殴り倒されてしまい、刺客は逃亡する。
※この刺客は実は楊修が放った者(徐庶)だったが、細身で体格も唐王妃と似ている。
※正体を訝った一瞬の隙を突かれたとはいえ、天下最強の剣客に師事して剣を修めたわりに、あっさりやられてしまう曹丕ちゃん……魂まで売ったのに……。胸を突かれて気絶してそのまま数日も昏睡していたが、この頃から既に肺を病んでいたようなので、弱点を突かれたのかな。
刺客は唐王妃だと考えた曹仁は、兵を連れて皇后の宮殿まで強引に入り込み、刺客は手傷を負っている、刺客ではないという証拠を見せろと唐王妃に迫る。焦った曹仁に襟を切り裂かれた唐王妃は、辱められたとしてその場で自刃してしまい、曹仁は捕らえられる。
※唐王妃の自刃の動機は、実際には、敢えて曹氏に罪を犯させ、漢室と司馬家を救うためか。
曹操は、嵌められたと劉平を批判するが、義姉であり仲間であり、司馬懿の恋人でもあった唐王妃の死に、劉平も怒っている。結局、劉平が曹仁を赦す代わり、曹操は司馬家を釈放し、許都から出て行くという取引が行われる。劉平はかねてより自分に協力する人材を許都に集めており、すでにかなりの権力の基盤を回復していた。ここから、皇帝=劉平と曹操との二重権力になっていく。
釈放された司馬懿は、王妃の死に絶望。一連の出来事の元凶は、劉平の仁愛を追求する姿勢にあったと考えるようになり、ついに自分は自分の道を行く、と劉平と決別。なおも追いかける劉平に、司馬懿はついに剣を向ける。私を殺して少しでも気が晴れるなら、そうすればいい。ただ私が死んでも忘れないでほしい、私たちはそれでも兄弟であることを。と劉平は、剣を摑んで刺されようとするが、迎えに来た曹丕が司馬懿を止める。
こうして司馬懿は劉平の元を去る。帰り道の馬車で、ごめんなさい、私はただ父上を守ろうとして、と言う曹丕に、あなたの所為ではない、と司馬懿は答える。彼女を殺したのは、陛下の仁慈です。
※曹丕ちゃんは、自分が刺客を倒せなかったために唐王妃が死ぬ結果になったことに、責任を感じているということかな? しかしほんとうに、あなたの所為ではないが……。曹操にも、もっと早く意識を取り戻してくれればこんなことにならなかった、などと言われるし(交戦した曹丕のみが、刺客が王妃ではないことに気づいたが、気絶している間に、曹氏方は王妃だと思い込んでことを起こしてしまった)、相変わらず全力で不遇属性。
そして司馬懿は申し出る。以前に、父と兄を救ってくれたら、あなたに借りを返すと言いましたが、もしあなたが、今でもまだ私を求めているなら。
曹丕は答える。私も言った、あなたの名を歴史に残すと。ともに不朽の功業を成し遂げよう、私たちの名を後世に残そう。私はずっと変わらず思っていたよ。仲達、今日からでも、まだ遅くはない。
馬車の中で司馬懿は跪き、「臣司马㦤,叩见主公」と主君への礼をする。
私はこの日を待っていた。本当にずっと、ずっと待っていた。曹丕は涙目で微笑みながら言うが、咳き込んで言葉は途切れる。それを厳しい面持ちで見つめている司馬懿。
※相変わらず純粋だし素直だし、表情と相まって、そこまで! って感じで、あまりにも一方的に愛が重い。しかし司馬懿は正直、まだ唐王妃の死による絶望と怒りで頭が一杯だしで、温度差が……。
※血を流さずに平和な世を作りたいという劉平の理想によって、却って身近な人々が死んでいく現実。元より司馬懿は劉平の甘さに否定的だったが、それでも弟(義弟)への親愛の念から、協力していた。それが、恋人を失ったことで、自分は違う道を選ぶと決め、覇道に踏み出す。結局この司馬懿は、一見横柄で冷酷なように見えて、情の人であり(この作品全般の傾向ともいうが)、これまでの行動の動機は、劉平や唐王妃への愛だった。しかしそんな司馬懿が曹丕を選んだのは、曹丕への愛ゆえではなかった、というところが、悲しい。
※曹丕ちゃんの悲しそうな笑顔は、その事実を悟っているからかと思ったが、それよりも、王妃を失って傷心の司馬懿を思いやりつつも、自分の元へ来てくれたことは、ただただ純粋に嬉しい、という感じなのかも。
※曹丕ちゃんは結局、長きに亘る心のダメージによって肺を病んでしまうが、このとき初めてその兆候を見せる。まだ遅くはない、これからだ、と二人で作る未来を語る言葉と、早世フラグのコントラストも切ない。それをじっと見つめる司馬懿の心境はどうなんだろう。主が長生きしそうにないとは、このときから予感していたかもしれない。