スリルミー 、私と彼の会話から推測される“彼”の家は元々“私”の家ほど裕福ではなく「最近」はなおさら困窮していること、そして“彼”は気づいていないか目を逸らしていることが残酷だなって思うんですよ
「高校の頃、クラスメイトから盗んだやつ」「それがどうした。高級品だ」
あの嵩張るタイプライターを、それもお金の自由にならない子供から盗んだのに当時でさえ問題にならなかったことを考えると、時間経過で古いだけでなく元々そんな高級なものではなさそうだなあって思うんですよね。あそびで盗んだのか必要だったから盗んだのかまではわからないけど。
そんなタイプライターを今も使い続けているらしいあたり“彼”の財政状況は芳しくなく、「うちは最近親父がケチで」の理由を“彼”は弟だけが愛されているからみたいな言い方をするし憎悪を膨らませているけど、弟は弟で「君の弟は金を払わないと何も教えてくれない」なんだよな……。「金に困ってるわけじゃない」“私”が聞き出すのをやめた程度の額をつけられた(或いは聞かなかったことにした)“彼”が違う院に進学した理由……
「スリル・ミー」以降 加速度的に事態が進行していくけどあの晩“私”が爆発しなかったら“彼”の親父の金庫を開けることになってたわけで、その中を二人で見てしまったら今まで通りの関係ではいられないよなぁ。本気で“私”に攻められた彼に選択肢はなかったけどあの晩は私にも選択肢はなかったのかもしれない 彼が家族に抱く自暴自棄な執着を上回る衝撃で計画をぶち壊さなきゃいけなかった
眼鏡を落とした“私”をなじる「高級品なんか掛けてるからだ!」って言い草に“私”がちょっと思うところあるように目を向けるけど、“私”の眼鏡は本当の高級品なのでお口に出さなかったのえらいよ