昨日も投稿しましたが、追加アイディアが浮かんだので増補改訂版です
七五三の出番がマシマシになったのでデイトラまだの方は本当にご注意を
『振り子の列車と兄姉妹関係』
#トライナリー
#書くトラ
高らかに唸るエンジン。列車は右へ左へと車体を揺らしながら山道に挑む。定尺レールのカタン、カタンという規則的なジョイント音も、軽量化のため壁を薄くとった車内によく響く。それらが組み合わさった影響か我が相棒は、すっかり寝落ちしていた。まぁ慣れない夜行列車で寝れなかったようだし仕方がない。墓参りに行くというみやびに乗っかって行程を立ててしまったのはこっちなので、寝かせてあげることにした。
列車の揺れに合わせみやびの頭も左右に揺れている。幸せそうな顔だなぁとそれを眺めていると、隣の席から殺気を感じる。そう、今回は七五三も同行している。自然な流れで決まったし、一応想定してはいたので問題はない。まだ少し当たりが強いのは仕方ないところか。私としても色々あったし距離感を掴みかねている。夜行列車では1人部屋3つだったので特に問題はなかったが、この列車に乗る時は数秒間の無言のせめぎ合いの末に厳正なるくじ引きにて座席を決定している。その結果みやびが1人掛けに行き、七五三と2人で座ることとなった。山間部で電波も通じず手持ち無沙汰なせいもあるのか、さっきから小競り合いが続いている。
それでも、こんな機会はそうそうあるものでもないし、思い切って腰を据えて話をしてみることにした。みやびを起こさないように、そして他の乗客に聞こえないように小さな声でだけど。これはココロの旅の後始末。選んでしまった結末の清算。そういうものかもしれない。
薄眼を開けて、右の席に並ぶ2人の様子を伺う。咄嗟に思いついたけんど、上手くいったようでなによりや。なごちゃんは鋭いけん気づいとるみたいやけど、相棒は変なところで抜けとるやき気づいちょらんようじゃね。あの2人にはうちの預かり知らんところで何かしらあったみたいやけんど、わだかまりはない方がええからね。
これで一応は安心ってことやし寝たいところやけど、左右に揺れるわ色々とうるさいわでなかなか難しいぞね。まぁ、ここで聞き耳を立てとるくらいなら許されるやろ。よく聞こえんが。
まったく、みや姉の考えることは相も変わらず突拍子もないぞね。あいつもあいつで嵌められたのに全く気づいとらんようやしなんなんや!しっかしこいつには感謝したものかコテンパンに伸すべきか未だに決めかねちゅう。うちがこうしてみや姉と共に居られるようになったきっかけなのは確かや。けんども、思わぬ邪魔が入って有耶無耶になったとはいえ、あのときぶつかり合ったのは確かや。何よりあのポンコツの作った世界を残して、その上みや姉をその設定のままにしちょるのはどうにも気に食わんぞね。
まぁそういう話は後々でええかね。みや姉もうちらがぶつかってるところが見たいわけやないし、なによりこんなところでできる話じゃないぞね。まぁとりあえずは、"仲良く"してやろうかね。
列車は人々を乗せ、南へ進む。旅人の事情とは関わりなく、車体を揺らし力強く、それでいていつも通りに。
3人の思惑が重なり、その関係は少しずつ変化していく。この旅が終わる頃には果たしてどうなっているだろうか。