うづきけ、そのろく「美佐子さんは混ざりたい」
「今日が何の日か…なんて、言わなくてもわかるよね?」
「期待してたんでしょ?」
「……ダメ、ちゃんと言葉にして」
「――ふふっ、よろしい」
「はい、ぴょんこからのチョコレート♪」
「去年よりも沢山呪い(アイ)を込めておいたから♪」
「ほら、あーん、して?」
「……恥ずかしい?」
「だーめ。恥ずかしくても、あーん、するの」
「この呪いはね? こうして……」
「……ん」
「ぴょんこがあなたの口に運ぶことで…初めて完成するんだから」
「……どう? 効いてる?」
「ぴょんこの事が、もっと、スキになる呪い」
「……これでもっと、ぴょんこから離れられないね?」
(うずうず…)
(そわそわ…)
「あっ、みさみさちゃん、もう入ってきていいよー」
「ええっ!?なんでわかったの~?」
「今日は空気を読んで二人っきりにさせてあげるオトナのみさのハズなのに~」
「いや、さっきから扉の前で「きゃ~!」とか「え~!」とか「だいた~ん!」とか聞こえてたから」
(……恥ずかしかったです)
「あ、あれっ? 彼氏くんも気付いてたの~?」
「ね、余計に顔真っ赤だったもんね~」
「私はいまさら別に恥ずかしくなかったケド」
「む~…」
「で、みさみさちゃんどうしたの?」
「あっ、そうだったわね~。みさみさうっかり」
「二人とも、きてきて~!じゃ~ん!!」
「今日はバレンタインなので、ケーキを焼いてみました~♪」
「ママのケーキ!」
「ふふふ~、ぴょんこちゃんスキだったでしょ?」
「ほら座って座って~」
「切ってあげるからちょっと待っててね~」
(それから、三人でテーブルを囲んで美佐子さんのお手製ケーキをご馳走になった)
(笑顔の二人と過ごす、賑やかな、穏やかな)
(この卯月家での楽しいひとときは)
(神楽からの呪いとはまた別に、二重に呪いを掛けられたようで――)
(来年も、その先も、この呪いは解けそうになかった)