「君たちはどう生きるか」見てきた。とりあえず「長い間本当にお疲れ様でした。」と言いたくなった。
児童文学的な冒険ファンタジーを期待して見に行ったけど、正直楽しかったかと言われると、微妙。
過去作みたいな時間を忘れるくらいの没入感を期待してたけど、そもそもそういう映画ではなかった。
・物語としては、古典(?)的な児童文学の系譜。母の死、親の再婚、転居、同級生との対立といった厳しい現実に対し少年の内に渦巻く自己欺瞞、心の闇を克服していく、ゆきてかえりし物語。現実の要素が断片的に織り混ざった摩訶不思議な異世界の中で、スモールステップ的に生きることの厳しさや物事の考え方を教えてくれる異世界の住人と仕掛け。最後は生と死、自分の心の影に向き合い、現実へと帰っていく。ある種の王道な児童文学。
・ただ児童文学の中でも、めちゃくちゃ静的、内省的なファンタジーだったので、媒体としてアニメ映画で良かったのかが正直疑問…。アニメ映画だからこそ表現できる良さも絶対あるはずだけど…一回見たくらいじゃ絶対わからないところにあると思う。
本来あるべき内面描写(異世界での出会いや経験に対し、主人公が何を思い感じたのか。どんな心の変化が起こったのか)が少ないまま、一見脈絡のない不思議展開が続くので、置いてかれる感がすごい。というか観客に付いて来させようという意思もあまり感じられない。申し訳程度に状況の説明台詞は入るけど…。
・アニメとしては、宮崎駿らしい表現は盛り沢山だった、けど、一番宮崎駿らしいと(俺は)思うワクワクさせる躍動感、爽快感、テンポ感が、この映画にはほとんどない。一方で、もののけ姫の祟り神のような、生々しくネバっこい、液体、血、臓物の絵ばかり印象に残る。過去作では躍動感・テンポ感に上手く隠されていた毒っ気のある描写が強調されてる感じ。
・はじめは、もう昔の躍動感・テンポ感を表現する力がなくなったのか…宮崎駿も年には勝てなかったってことか…なんて思ったけど、考えてみると冒頭の火災のシーンは、階段を駆け上がったり、現場に向かって走ったり、群衆の波にのまれたり、かなり動きのある絵もあったとは思う。
物語展開のテンポ感を作る監督としての力量がなくなったということなのか、それとも静的な物語として、あえて淡々と展開させることにしたのか、分からない。でも生と死、自己内省がテーマならやはりあえての演出なんだろうか。
それにしてもラストはすごい唐突に終わったな…元々宮崎駿はかなり厳しくコントロールする監督だったと思うけど、今作ではどこまでコントロールしているんだろう。とりあえず、本当にお疲れ様でしたとは言いたくなった。
・あとキャラクターデザインは良かった。鳥さん可愛い。兵隊インコも馬鹿っぽくて可愛い。アオサギも良かったけど、おっさん化しないで欲しかったな。主人公も相変わらずジブリっぽい硬派なイケメンでよき。