探索者、白石真兎馬が
ハッカー集団「ブレーメン」に入るまでの前日譚。
ブレーメンの音楽隊はロバ、犬、猫、鶏で構成されている。
◆登場人物
白石 真兎馬(シライシ マトバ)
コードネーム:銀の弾丸、兎馬(ロバ)
=……プロローグ
目が覚めるとあの日を思い出す。
家にあるメインコンピューターがハッキングされていく最悪の状態。ジャックされたディスプレイには鶏似たバジリスクのマークが表示されている。
自分の手足をもぎ取られて何もできない状態で、目の前に死が迫ってくる。
自分の築いていたネット犯罪歴がすべて暴露され、
最底辺で這いつくばるしかできない人生を強く意識した。
死ぬ気でサーバー防衛を行った。
吐き気がしたが、口汚く罵りながらも手と頭を動かした。
落ち込んでいる場合じゃない。
落ち込んで考えることを放棄した瞬間に、敗北が確定する。
ネガティブになっていい。むしろロジックを身体に宿らせるときは、ネガティブな方がいい。隅々まで見渡し、甘い計算を捨てて厳しくロジックの確認を行っていく。
「この方法は最終的にダメになる。採用してはならない。時間の無駄だ。」
「この方法は途中までは使い物になるが、後がダメダメだ。」
「次にこの方法はどうだ?いける、、いや、甘い考えはよせ。相手は今までの想定を上回っている。あの対抗策くらいは考えつくはずだ。」
「なら、この方法は……」
これだ…この方法しかない。
相手が仕掛けてきたハッキングプログラムを理解し、そこに新しくプログラム埋め込み、ダミーマシンに誘い込み閉じ込める。
「ブレーメン…」
そのプログラムには名前が振ってあった。
ダミーマシンに閉じ込められたプログラムは、自分の状況を理解したのか。モゾモゾと動きを弱めていき、自己破壊プログラムを実行して消えていく。
中身をすべて見たかったのだが、手の内を晒したくないらしい。
「ちっ、、消えたか。」
このまま様子を見て、ハッキング用ウイルス作りに活かそうと思ったが難しいようだ。家の中にあるすべての電子機器類の電源を落とし、ネットワークの接続から離す。
ハア……ハア…
気がつくと身体が冷えていた。焦りで大量の汗をかいていた。
髪がムワムワして気持ちが悪い。
汗で張り付いた服を洗濯機に放り込み、身体を洗って風呂に浸かる。
湯に身体を沈ませ、口からブクブクと泡を作りながら、一時的に捕まえたプログラムの挙動を思い出す。そんな風にして湯が冷めるまで考え、寝床についた。
==……Hello Servant
目が覚めると、ネットワークに唯一繋げていた改造スマホに連絡がかかっていた。
「
君は私達のエースと互角の戦いを繰り広げた。
おめでとう。君を私達の仲間として迎えて上げても良い。
もし、この意見にイエスなら
XXXXXにあるXXXXにメモを取りに来てくれ。
ブレーメン
」