アトランティスのイアソン、初戦闘時に宝具使用不可になっていてその状態異常の名称が張りぼての船長なんですけど、ぐだ達と会ってから最後まで張りぼてのままあの海を乗り切った船長、本当にかっこうよかったなって話。
アトランティスのイアソン様、あの異聞帯で二つ張りぼてを纏ってるんですよ。
一つは船。
ドレイク船長の船を託され、存在強度を補強したそれを『アルゴー』と呼称して海に繰り出すわけですが、呼称してるだけで船自体はかつてイアソンや英雄たちが乗ったアルゴーそのものではないんですよね。黄金の鹿をアルゴーという概念で覆っている、つまりは張りぼてのアルゴー号なわけです。
まあ、勇者である前に船長であるイアソンに所有権が移っていて、そのイアソンがアルゴーと呼びアルゴーとして扱うわけなので、あのアトランティスにおいてはあの船こそアルゴー号なんですけどね。サポートNPCで宝具も使えるし。
二つ目は見た目。
シナリオを見る限り、より正確に言うならば霊基の状態ですね。クリアした人はご存知のメディアリリィから贈られた見た目を取り繕うだけの礼装です。
見た目を繕うだけ、つまり張りぼてです。
協力を求められた際に言っているように、「サーヴァントだって痛覚も恐怖もある」んですよ。なので、冷や汗をかきすぎて気持ち悪くても爆発が背中に直撃して死にそう名ほど痛くても、それらが言動に出ないようにできるかはイアソン次第なわけです。
そんなイアソンですが、きっちり演技をして敵も味方も欺きます。船長の調子が悪いことを悟られれば味方の士気にも影響が出かねませんし、敵に付け入られる隙にもなってしまいます。イアソンはそれをわかっていたわけです。
ところで、礼装が解ける前に作中でイアソンの状態に気づいている人がいるんですよね。
ぐだ、ホームズ、所長。自力で気がついたのはおそらくこの3名です。
ぐだがいつから気づいていたのかは難しいですが、オリオン達との別れの後の選択肢に「……イアソン、大丈夫?」とあり、わざわざ三点リーダーを入れてるのでこの時点で察していると思われます。この選択肢のあとイアソンは間髪入れずに誤魔化してくるのでマシュは気づけてません。(ちなみにもう一つの「イアソン、一緒に行こう」を選ぶと笑って「ポセイドンまで付き合ってやろう」と言われるんですが、結末をわかった状態で見ると"まで"と言っているのが大変つらいです)
次にホームズ。ボーダーに戻ってきた際に「……。……ふむ」とホームズが言っています。沈黙の多さからして見抜いているでしょう。イアソンも見抜かれたことに気づいているので、この後「帰還してくれて非常に心強い」と言ったホームズに「心にもないことを言うな、探偵」と返しています。死にかけでもうろくに役に立たないのわかってるくせに、というわけですね。
そして所長。ポセイドンのコア破壊戦において、イアソンの治療中や見えない傷と言った発言から「ーーーー。おまえさん、まさかとは思うが……」と何かを推測します。所長、カルデア赴任直後や毒殺されそうになった際の様子見るにイアソンに共通する要素をちょいちょい持っているんですよね。そりゃあ察することもできるでしょう。
ちなみにマシュですが、おそらくマシュはポセイドン脱出間際になるまで気づけていなかったと思います。イアソンに対するぐだの応対を見て、怪我か何かがあって戦闘をできる状態ではないということを察しているだけで、よもや死にかけ寸前だとは思いもしなかったのでしょう。イアソンは最後まで見栄を張り続けていましたし、これはマシュが云々というよりイアソンの隠し方がうまかったが故だと思っています。
さて、ここからはイアソンの株が爆上がりした結果の妄想混じりな話なんですが。
そもそもあれだけぎゃーぎゃー言ってたイアソンがなんでそんな頑張ったのって話なんですけど、あいつ無駄な行為でなければ身を危険に晒せるんですよ。
覚えているでしょうか、終局特異点において名誉挽回のためにとかなんとか言いつつ、ぐだ達の道を拓くために、ひいては人理を守るために自ら使い潰されにきた彼を。万に一つでも勝ちの目があるなら、仲間の命も自分の命もチップにして博打だってする。
あのアトランティスの海で、新生アルゴーとして船出を迎えたイアソンは見たんでしょうね。ぐだとカルデアと居残り組、そしてメディアリリィの後押しで、三重の防壁を突破する勝ちの目を。
「負けないという強い意志があり、最後まで諦めないと違って走り抜けた」のは、先に抜けていった仲間だけでなく、口にしたイアソンもそうです。
たぶん、カイニスにヘラクレスを馬鹿にされたあたりでもう後には引かないという決意があったんじゃないかと。
ヘラクレスを連れていけなかった分、確実にぐだ達をオリュンポスへ連れていくために死に体に鞭打ってポセイドンのとこまで来てくれたのかなと思うと胸が熱いですね。まあ、真偽は定かではないのでただの妄想ですが。
窮地における咄嗟の閃きは他の追随を許さない。知恵と勇気で戦う英霊。勇者であり船長であるイアソンもいたからこそ、あの海をぐだたちは乗り越えられたんだと思ってます。
ありがとうイアソン、本当にかっこうよかったよ。