これはとち狂った2214のヤマ太のポエム。
エッチはありませんし、特にオチも無い。多分この太一さん結婚してる
「お前を抱きに来た」
自称未来のヤマトは中学生の太一に逢って早々、そう太一に告白した。
「三万でお前の時間をくれ」
「抱かれるのは嫌だがデートだけなら」という条件を出したのは、自称未来のヤマトが今にも死にそうな顔つきで懇願したからだ。太一は目の前の男が本当に未来のヤマトだとは信じていない。しかし断ればそのまま海に身を投げそうな男を放っておくことは出来ず、男が乗るバイクの後ろに乗って新宿にあるカフェに来ている。これで事件に巻き込まれても自業自得である。新宿である事に理由はなく、車で30分以上もかかる新宿なら知り合いに合わないだろうという判断であった。
「未来のオレって死んだの?」
「いや、生きてる」
「じゃあ、どうして過去のオレとデートしてんだよ。未来のオレとしたらいいじゃないか」
「未来のお前は……」
そこでヤマトはブラックのコーヒーをじっと見つめて黙ってしまう。太一はヤマトが何か言うのを暫く待っていたが、そうそうに飽きて奢って貰った新作のフラペチーノを啜る。今月の新作はイマイチかもしれない。
「まあ奢って貰っている身分で、あまり深い事聞くのも野暮だな」
「すまない」
デートと言ってもヤマトはこれからどこかに行こうとは言わなかったし、太一もどこかに行きたい訳でもなかった。ただアイスティーとフラペチーノで二時間も粘っている。正直嫌な客だと思う。
「ごちそうさま」
「…………ああ」
ヤマトはずっと太一を見ていた。最初は居心地が悪くて「楽しいのか?」と聞こうとしたが、その流れで「ホテルに行こう」と言われても困る事に気付いて、黙ってフラペチーノを飲んでいた。しかし飲み切って暇になった事で間が持たなくなってしまった。どこに視線をやっていいのか分からず、ストローを噛む。俯いた太一をどう思ったのか知らないが、ヤマトが薄く笑った気配がした。
「…………帰るか」
立ち上がり、トレイを持ち上げるヤマトに慌てて太一も立ち上がる。太一が持っていた空のコップはヤマトが取り上げて、一緒にゴミ箱へと捨ててくれた。そつが無いその姿に大人だと思う。
「ここでいいよ」
帰りも同じくバイクで送ってくれたヤマトに近くの公園で降ろして貰う。マンションの前ではなかったのは、なんとなく後ろめたい気持ちがあったからだ。ヤマトはその事について何も言わなかった。
「今日はありがとう」
「うん」
「これはお礼だ」
太一の手を取ったヤマトからお札を握らされる。一万円札が三枚もあって慌てて返そうとするが「約束だろ?」とヤマトは受け取らなかった。
「もしよかったらまた逢って欲しい」
「あっ」
そういってすぐさまバイクを走らせたヤマトに太一は追いつくことが出来ない。ヤマトが消えていった道を暫く呆然と見つめていたが、突然鳴り響いたメールの着信音に現実へと引き戻される。メールの送信者はヤマトだった。明日の授業について聞いてくるヤマトは己と同じ歳のヤマトなのだろう。ほっと息を吐き、返信をしようとした手には未来のヤマトから貰った三万円があった。
三万が援助交際の相場として高いのか高くないのか分からないが、中学生の太一からすると大金である。しかし、これを使うのはどうも気が進まない。どうしようかとも思ったが夕暮れの公園でやる事ではない。後で考えようと、とりあえずポケットに突っ込むとヤマトへと返信のメールを打ちつつ、家へと歩き出したのだった。