6.5章考察
クリア画面に表示された『Ex Falso Quodlibet』は『爆発律』と呼ばれる論理学の手法です
「間違った命題を利用すればどんなデタラメも真実にできる」という論法です
それを利用すれば……
『異星の神』が存在すると証明されてしまいます。
まず最後のシーンで見せられた根っこ人間はデイビッド・ブルーブック。
実験台に置かれていた枝こそが『検体E』です。
しかし肝心なところで「これが『検体E』だよ」とモリアーティが言い残して消えてしまったせいで、カルデアは目立って仕方のない「根っこ人間が『検体E』である」と間違った推理を植え付けられてしまいます。
それこそが使徒としてのモリアーティの役目でした。
「カルデアに間違った命題を与えること」がモリアーティの使命でした。
カルデアが辿るであろう間違った推理とは……
「エリア51に宇宙人が運ばれて、残虐非道な実験が100年にも渡って繰り返された」
「犠牲になった宇宙人は人間への憎しみを積み重ね、ついに地球白紙化の脅威を外宇宙から引き寄せた」
「マスターであり、使徒やトラオムのサーヴァントを使役する力を持っている」
しかし実際の出来事は……
「2117年、ソラからの侵略により人類は滅亡する」
「地球の白紙化は2017年から2117年の間の出来事であり、異星の神の仕業ではない」
「エリア51の深部でブルーブックが見たものは、ただの枝だった」
「ブルーブックは殺害され、『宇宙人のような物体』へと作り変えられた」
「100年の恨みを積み重ねた宇宙人の役割を背負わされた『人間』として、トラオムのマスターになった」
カルデアは間違った命題から間違った真実に辿り着く。
間違った命題を利用して、空想は現実に。
「『異星の神』の実物と実在する証拠がある。よって『異星の神はU-オルガマリー』である」
という証明が立てられます。
まあ『異星の神』なんていませんけど。
間違った命題から与えられた偽の真実ですけど。
たまたま証拠(偽検体E)と実物(偽実行体)を見つけてしまって、間違った真実に導かれてしまう。
たぶん、その証拠を見せるのが使徒・モリアーティの役目だった。
そして、その実物を見せるのが使徒・ホームズの役目だったのでしょう。
ファミ通のFGO6周年インタビューで語られた使徒たちの役目。
「村正の役目は、キリシュタリアの裏切りが読めていたので、あそこでアトラスを斬る」
「ラスプーチンの役目は、異星の神の当面の面倒を見る」
「道満の役目は、異聞帯の王をそそのかすだけのノイズ役」
村正と道満の役目はすこしメタ的だと思います。特に道満は、まるで真実にたどり着かせないためだけの、しかしそれこそが一番重要な役目でもある、という印象があります。
カルデアのホームズは「カルデアに協力しつつ、この事件の犯人を突き止める」という推理で動いていました。
けれど、事件に犯人がいなかったとすれば。
なのに、「ホームズは必ず事件の犯人を突き詰める」「解決の手がかりが世界のどこかに発生する宝具を持つ」という性質を全力で利用されたなら。
いないはずの犯人に、突き当たってしまうのです。
この『地球白紙化事件』の『犯人役』は『検体E』であり、『犯人役』を演じたのは『デイビッド・ブルーブック』です。
でも犯人はいませんよ。すべてデタラメ。フィクションです。