渾身のそういうところだぞアマデウス!!という叫びを、やっぱり叫びきれなかったので。纏まらないただの叫び。2部の超絶ネタバレです。めちゃくちゃ長いしだらだら本編の台詞を書いているので注意な。
そういうところだぞアマデウス!!!!
と何回叫んだかは分からないんですが、本当に、あんなちょっとの出番で色んなものをかっさらったあの男本当に許せない(大好きです)
まずサリエリという英霊の前提を。
FGOにおけるサリエリ、英霊としての本体は現実のサリエリではなく、人々の間に伝わる逸話、「無辜の怪物」の方です。
「きっとアマデウスが憎くて殺したんだ」
「あの才能を妬んでいた」
現実のサリエリは優れた音楽家にして教育者でしたが、英霊となるほどの格はありません。
あくまで「アマデウスを殺した者」という逸話が形を成し、英霊にまで昇華された、アマデウスなしには成立しえない英霊です。
実際にサリエリがアマデウスを殺害したか、なんてものは成立に関係がないんですよ。
人々が「サリエリがアマデウスを殺した」と信じたから、その逸話が形をとって、「無辜の怪物」として形をなしたアヴェジャー。それがFGOにおけるサリエリです。
本人の意識もあるけど、本人はおまけで逸話が本体ってこと。
サリエリとアマデウスについて、知らない方は各自ぐぐって下さい。
現実では二人の共同作が見つかっていたり、アマデウスが日記に「サリエリが僕のオペラを褒めてくれた!」と喜ぶ記述が残っていたりするので、実際の二人の関係がいかなるものだったか、特にサリエリがアマデウスをどう思っていたか、というのは未だに不明なんじゃないでしょうか。
(アマデウスはサリエリをけなす日記だの手紙だの遺してるんですけど、まあ人間性に関してはもう皆さんご存知の通りだよ)
大雑把に、この二人は「音楽の神に愛された至高の天才」と「人よりも遥かに優れた才能を持ってはいるものの、けして神の領域には届かない秀才」という理解でいいと思います。
私はねえ、駄目なんですよ。この「秀才」に死ぬほど弱いんです。
バッテリーの瑞垣俊二、黒子のバスケの氷室辰也や高尾和成、アイシールド21の金剛雲水。
この辺に弱い人、サリエリ刺さると思います。
この手の秀才の何が一番しんどいかって、「けして追いこせない壁」が見えてしまう。
聴き分けるだけの才能のない、何を聴いても同じに聴こえる聴衆にはけしてわからない差、しかしそれは彼ら秀才がどれだけ努力しても、幾年月をかけたとしても、何をどうやっても覆らない、彼らには与えられなかったギフトが、彼ら秀才には見えてしまう。残酷なほど明らかに。
さらに残酷なことに、秀才ですらない凡人からは、彼ら秀才もまた「天才」と呼ばれてしまうことがある。
全然!!違うんだよ!!!あいつらとは根本が違うのがなんでわかんないんだ!!!
人よりも優れた才能を持つ秀才たちは、誰よりも天才たちの才能の価値を理解し、自分たちとの埋められない差を目の当たりにします。
自分がこの先何をしたとしてもこの才能の前では努力など無駄だと理解できてしまう、という不幸。
それでも、人よりも優れているがゆえに、自分の才を捨てきることもできない、という不幸。
秀才がぶち当たる不幸は大体この辺が多いんじゃないでしょうかね。
FGOのアマデウスは本当に音楽と、愛するマリア以外に対しては本当にろくでもない男です。
でも音楽に対しては真摯だった。
そしてあれで物事の本筋というか、芯をとらえた発言をする。
オルレアンでマシュにした助言とかもそうですね。
そういうところだぞアマデウス!
ろくでなしだけど憎めない、何もかもどうでもよさそうに見えてよく見ている。
はちゃめちゃにずるい男だよ。
ようやく2部1章の話をするよ。
アマデウスと思われていたのは実はアマデウスに呪いをかけられたサリエリでした、というのが後に判明します。
それまでどうせ言峰かカドックがなんかやったんだろ、と思っていたんですが、実はアマデウスもこの世界に召喚されていたんですね。サリエリよりも先に。
そうしてピアノを弾いていた。魂を籠めて。
何のためか? 世界を救うために。自らの霊基をぼろぼろにして。
そういうところだぞアマデウス!!!
アマデウスに会うまで、サリエリは彼を殺したいのか、それとも友としての情があるのか、自分でも定かではなかった。
彼に会えば自ずと明らかになると思っていた。
そんなサリエリが、ぼろぼろになってピアノを弾くアマデウスを見た瞬間に叫んだ言葉が何だと思います?
「アマデウス……!?
おまえたち、この神才に何をした!」
ですよ。
ねえ信じられる?
会うまでアマデウスへの友情なのか殺意なのかどうするべきか問いたいと願っていた男が一番最初に口にしたのがこれですよ。ねえ。
神の子の価値も解さずその男をぼろぼろになるまで演奏させていた輩への怒りが第一声て。
誰よりもアマデウスの才を愛していなければこんな言葉は出てこないでしょう。
そして
「貴様の価値を微塵も解さぬ寝ぼけた老いぼれの為に、
魂をかけて弾き続けていたというのか……!?」
ですよ。
サリエリがどれだけアマデウスの才能を愛して、その価値を認めて、それを解さぬ凡俗を憎んだか。
もうしんどい。しんどいゲージ一本軽く消し飛んだ。
そしてそんなサリエリに、アマデウスはいつもと変わらない飄々とした様子で、
「さすがに限界だ。というか死ぬ」
だとか
「そんな訳で、どうせなら君に殺されようと思ってね」
「君、僕を殺したいほど憎いんだろ?
ならここで一つ、サクッとやっちゃいなよ。」
とか言っちゃう。
そういうところだぞアマデウス!!!!
それに対してサリエリ
「おまえは、おまえが、そのようなことを言うのか!」
「神域に到達した者を、この手で殺せというのか!」
ゲージが何回吹き飛ぶのか?ヘラクレスの試練かよ。
サリエリは音楽を愛しているんですよ。
音楽を愛しているがゆえに、アマデウスの才能を愛し、妬み、それを理解しない人間を憎み続けた。
それがサリエリという英霊です。
そして、アマデウスはサリエリがアマデウス憎しを拗らせていることを知っている。
だからやっちゃいな、というんだけど、やったとしてもサリエリの人生が救われないことも知っている。そればかりは天才にも救えない、と言ってしまう。
そういうところだぞアマデウス。
そして少しのやりとりの後ね、アマデウスね、お前ね、ほんとそういうとこだぞ……
「ああもう、安心したらなんか切れちゃったな。
もうダメ、1分も保たないな、僕」
そういうとこだぞ…………(号泣)
それからアマデウスはサリエリに「ひとつワガママ」を言います。
「全てが終わったら、きらきら星を弾いてくれ。」
それから遺言のように
「だからそれまで、少しの間、僕に唯一近付こうとしてくれた君に。
届かぬことを知って憎み続けてくれた君に。(この台詞傍点がついている)
後を託す。」
「何、パトロンの耳は鈍い。」
「僕たちにしか分からぬ違いなど、どうってことはないさ。」
と告げて、サリエリに呪いをかけます。
君が「アマデウス」だという呪い。
そうしてサリエリは、正気に戻されるまでアマデウスオルタであり続け、この記憶を失っていた。
もう私の心臓は砕けてすり潰されてぐちゃぐちゃで原型をとどめていないんですが。
何がしんどいって「近付こうとしてくれた」です。
「してくれた」
わかる?????
「僕に唯一近付こうとした」じゃないんだよ。
「僕に唯一近付こうとしてくれた」なんだよ。
アマデウスにとってサリエリは、どうでもいい存在ではけしてなかったのだと、そういう台詞だと、わたしは……そういうところだぞアマデウス!!!!!
安心したのは、サリエリがアマデウスにとって「後を託すに値する人間」だったからです。
神才で、誰も自分に近付けない、誰も自分と同じ土俵に立てない、誰も自分と戦ってはくれない。
そんなアマデウスにとって、届かないと理解しながら、それでも「唯一近付こうとしてくれた」サリエリは、他の人間とは違う存在だったんじゃないかと、わたしは……(号泣)
「僕たちにしか分からぬ違い」って、それはアマデウスにとって最大の賛辞だと思うんですよね。
同等の才も、技量もない。それでも、それは「僕たちにしか分からぬ」程度の差。
それは、サリエリが凡俗とは違う、一人の音楽家であると認めた言葉だと思いました。
最後までアマデウスの異質なまでの才能を理解できなかった人間にはわからない、「唯一近付こうとしてくれた」サリエリと、アマデウスにしかわからない。
けして相容れぬ関係性でありながら、それでもそこには二人にしか分からない理解があったんじゃないのかと、私は思います。
最終局面、サリエリは皇帝を眠らせるためのピアノを弾こうとしますが、届かない。
技量が足りない、私にはできない、アマデウスの領域には達することができない。
誰よりも自分がそれをよく知っている。
それでも弾け、と心の中のアマデウスが言う。
心を響かせる音を作れない、人を感動させられない。
私の残りゲージが吹っ飛んだのはここから。
「ああ、だが……。
我が心に巣食う、我が妄念のアマデウスよ。」
「私は知っている。おまえの闇を知っている。」
「明かりの落ちたホールで、
ひとり顔を覆っていたおまえを知っている!」
はーーーーーーーー!!!!????
「おまえは我々を見なかった。凡人を観なかった。
人間を観なかった。当然だ。」
「おまえは、おまえの中の”何か”としか
戦っていなかったのだから!」
「おまえは内なる悪魔より、音楽を愛した。
どのような魔に拐かされようと人の作る音楽を愛した!」
「だが―――音楽は、社会は、
人間の営みは、おまえを救わなかった。」
サリエリ…………。
もはや何か言うことすら野暮だと思うんですけど吐き出したいから言うね。
天才とは孤独な生き物だと私は思います。
孤高で、理解されず、その努力も苦悩も「才能があっていいね」の言葉で片付けられ、妬まれ、疎まれ、しかしその苦労すら「才能があるのに何が辛いの?」と理解されない。
その孤独と苦悩をサリエリは知っていたんですよ……
それでもアマデウスを憎んだ。音楽を愛する者として。
そしてその天才を理解しない凡俗の民衆を、当時の社会を憎んだ。音楽を愛する者として。
アマデウスの作る音楽を愛し、その才能を妬み憎み、誰よりその価値を評価していたからこそ、民衆をも憎んだ。
それが、アヴェンジャーサリエリです。
しんどくない??
でもまだ追い打ちがあるんだな。
私には弾かねばならない理由があるのだな、と一人呟くサリエリに、心の中のアマデウスが語り掛けてきます。
『そもそもピアノの腕なんて気にするなよ』
『ほら。誰であれ、みんな僕より下手くそなんだから』
そういうところだアマデウス!!!!!
そうして叩きつけられる憎悪、怒り、情念。
サリエリの怒り、アヴェンジャーサリエリの怒り、そしてアマデウスの怒り。
鍵盤を叩きつける渾身の「Dies iræ」が皇帝の動きを鈍らせる。
勘弁してくれ……
ラスト。
退去していく他のサーヴァントを尻目に、サリエリは退去が始まらない。
宮廷に戻り、ヤガたちに広場までピアノを運ばせます。
そこで弾くんですよ。「きらきら星」を。アマデウスが言ったワガママを叶えるために。
彼らの時代では愛の歌であった、今は星の歌。
手の届かない上空の刹那の瞬き、遥か彼方の美しい星々の歌を、彼は消えることの決まっている世界で弾き続ける。
30秒CMのラストを見て下さい。
誰もいない何も残らぬ世界で、彼はこの世界が消えるまでピアノを奏でている。
誰よりも愛し、誰よりも憎んだアマデウスから最期に託された願いのために。
憎いだけならよかった。
愛し抜けるだけならよかった。
半端な才能がなければよかった。
彼の音楽を理解などできなければよかった。
彼の孤独を知らなければよかった。
それら全てを抱え込んだ上で、人々の「あいつが殺したに違いない」という逸話によって英霊として顕現した。それがサリエリです。
ピックアップまだですか、ねえ。