とうらぶ二次創作短編小説
『飲みすぎ禁止令』
本文は追記から
※弊本丸が元ネタの小噺
※福島&日本号がメイン
※ほのぼの日常回
七月。
日本号はいつも通り、部屋でへべれけていた。
日本号「うぃ〜っ、とぉ」
その横に、複雑そうな表情で日本号を見守っている姿がひとつ。
福島光忠だ。
福島「………号ちゃん。ちょっと聞きたいんだけど」
日本号「んあ?何だ?」
福島「『飲みすぎ禁止令』って何だい……?」
日本号「あ?何だそりゃ」
福島「光忠が言ってたんだよ。号ちゃんがお酒でやらかしたら、また発令されるかも、って」
日本号「待て待て、んなもん聞いたことねぇぞ、俺ぁ」
福島「でも池に落ちたのは本当だよね?」
日本号「うグっ」
福島「正直、号ちゃんは『飲みすぎ禁止』くらいで丁度良いと思うんだけど」
日本号「……俺の愉しみを取るんじゃねぇよ……」
愚痴りつつも、心なしか御猪口に注ぐ酒の量が少なめになる。
福島「本当に知らないの?『飲みすぎ禁止令』の話」
日本号「たった今知った所だぜ。んな怖え制限かかった事あんのかよ」
福島「号ちゃんが知らないなら、もっと前に発令されたのかな」
日本号「俺が来るより前ねぇ…。次郎太刀あたりが一枚噛んでんじゃねぇのか?」
福島「なるほどね……ちょっと調べてみようか」
福島は立ち上がって部屋を出ていった。……が、すぐに戻ってきた。
福島「何してるの号ちゃん、一緒に行くよ」
日本号「はぁ!?何で俺まで行かなきゃならねぇんだよ」
福島「何をやらかしたら禁止令が出ちゃうのか、把握しとかなきゃだめでしょ」
日本号「おい引っ張んじゃねぇ、いてて」
日本号は、福島に引き摺られる形で無理矢理部屋から連れ出された。
部屋を出た所で、御手杵と出くわした。
御手杵「おー、ヨッパライの介抱かー?お疲れさーん」
福島「どうもー」
日本号「違ぇよ!!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜
福島(と日本号)は次郎太刀の部屋にやってきた。しかし、次郎太刀は遠征中で不在だったため、代わりに太郎太刀に尋ねてみることにした。
太郎「『飲みすぎ禁止令』ですか……確かに、次郎太刀が関与していても不思議ではありませんね」
福島「次郎さんから何か聞いてないかな?」
太郎「さぁ……少なくとも、私が来てからはそのようなものが発令された記憶はありませんが」
福島「じゃあ、もっと前に出てたのかな…?」
日本号「太郎太刀より前って……相当前じゃねぇか?」
福島「あんまり昔の事はよく知らないんだよなぁ俺。光忠が三日目に29番目で来たって事は知ってるんだけど」
日本号「むしろ何でそれは知ってんだよ……」
次郎太刀が遠征から帰ってくるまでの間、他を当たってみる事にした福島(と日本号)。
日本号「つーかよ、燭台切から聞いたんだろ?もう一回詳しく聞いてみりゃいいじゃねぇか」
福島「あっ、そうか。その手があった」
二振りは燭台切が居そうな場所を探して、厨に辿り着いた。
歌仙「あぁ、『飲みすぎ禁止令』ね……」
厨には燭台切は居なかったが、食器を片付けている最中の歌仙兼定が居た。
歌仙「あったね、そんな事件も」
福島「『事件』なんだ」
歌仙「禁止令が出るからには、それなりの理由があるものだよ。しかし……」
歌仙は、福島の後ろできょろきょろと厨を見回している日本号の方に視線をやった。
福島「号ちゃん、お酒探すのやめて」
日本号「ちっ……へぇへぇ」
歌仙「……事件について、ここで僕が詳述するのは止しておこうか。『尊厳』に関わるからね」
福島「尊厳?」
歌仙は「薬研にでも聞いてみるといいよ」と言い残して、食器の片付けに戻ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
それからも燭台切はなかなか捉まらず、先に薬研藤四郎が見つかった。薬研は畑の近くに居た。畑当番の働きぶりを見守っているようだ。
薬研「実休さんが無事に当番を全うできてそうか、様子を見てたんだ」
福島「ありがとうね、俺の兄弟の面倒見て貰っちゃって」
薬研「あんたもヨッパライの面倒見て大変そうだな」
日本号「だから違ぇっての」
福島は薬研に、例の禁止令とその原因になったという事件について、何か知らないか聞いてみた。
薬研「あー……あれね。俺から言っちまっていいもんかどうか……」
福島「お願いするよ、ここだけの話にしておくから」
薬研「いや、ここだけの話にしたところで、もうアウトなんだよなぁ……」
薬研は、福島の後ろでもう一振りの畑当番だった蜻蛉切から普段の生活態度について苦言を呈されている日本号の方に視線をやった。
福島「……もしかして、やっぱり号ちゃんが絡んでたりする?」
薬研「いや、事件には関係無いんだけどよ、でも日本号には聞かせちゃマズいというか何と言うか……」
薬研らしくない歯切れの悪さに、福島は首を傾げたが、日本号は「ははーん」と何か思い当たったようだ。
日本号「なぁ、その事件よぉ……へし切の野郎が絡んじゃいねぇかい?」
福島「号ちゃん、にやけ顔が気持ち悪いよ」
薬研「あちゃー、バレちまったかー。こりゃ観念するしかねーかなー」
わざとらしく降参の素振りをしたあと、薬研は当時の状況について語り始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
それは、二月に入ってすぐの頃。
本丸の掃除をしていた燭台切光忠が、とある部屋の襖を開けた時。
燭台切「は……長谷部くん!!??」
部屋の真ん中で、へし切長谷部が倒れていた。
燭台切「そ、そんな……一体どうしてこんな事に……!?」
薬研「何だ、どうかしたのか?」
丁度近くを通りがかった薬研が、異変に気付いてやって来た。
薬研「こりゃあ……何があったんだ?」
燭台切「長谷部くん、大丈夫かな……?」
薬研「とりあえず脈はあるな。呼吸は……」
そこで薬研は、とんでもない事に気が付いた。
薬研「うおっ、酒くせえ」
燭台切「ええっ!?」
薬研「こいつは……酒の飲みすぎでぶっ倒れてやがるみたいだな……」
燭台切「そんな、長谷部くんに限って、昼間からお酒なんて……」
勤勉な長谷部が昼間から酒で倒れた、という一報はすぐさま周知のものとなり、現場検証が行われた。
平野「証人を連れて参りました!」
数日前に来たばかりの平野藤四郎が『証人』として連れてきたのは、不動行光だった。
不動「あんだよ……俺は悪くねーぞー……」
今でこそ極めたことにより酔った姿の方が珍しくなっている不動だが、当時は甘酒依存症真っ只中だった。
〜不動の証言〜
不動「俺ぁ……あいつと飲んでたんだよ。ほら、昨日来たばっかの……何だっけ……」
燭台切「次郎太刀さん?」
不動「そう、その次郎って奴に誘われてよ……そいつと部屋で飲んでたんだよ……そしたらそこに、長谷部が乗り込んで来やがって……」
〜数刻前、次郎太刀の部屋〜
長谷部「おい!次郎太刀!貴様、主を飲みに誘ったらしいな!?」
次郎「ん〜?お近付きの印に、一杯どうだい?とは言ったよ。アッハッハ!」
長谷部「残念だったな。主は酒は飲まない主義だそうだ」
次郎「なんだい、そうなのかい?それならそうと言ってくれりゃいいのに」
長谷部「だから……」
長谷部「俺が主の代わりに貴様の相手をしてやろう!!」
燭台切「なんでそうなるの!?!?」
長谷部は次郎太刀との飲み合いになり、ウワバミの次郎太刀に付き合った長谷部は、限界フラフラの状態で部屋まで帰っていった。そして、前後不覚なせいで別の部屋に辿り着いてしまい、そこで力尽きる事になったのであった。
事の顛末を重く見た審神者は『飲みすぎ禁止令』を発令した。『禁酒令』にしなかったのは、あくまでも『飲みすぎ』が良くなかったという事情を鑑みてのことであった。
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当時の詳細を聞いた日本号は、笑い過ぎて動けなくなっていた。しかしひとしきり笑ったあと、神妙な面持ちになり、
日本号「やっぱウワバミの相手するときは気を付けねぇとな、うん」
と頷いた。
福島は、『酒は飲まない主義』の主とは気が合いそうだなと考えていた。そして神妙な面持ちになり、
福島「やっぱり号ちゃんは『飲みすぎ禁止』くらいで丁度良いよ、うん」
と頷いた。
日本号「なんでだよ!?!?」