【導きと共に】
……何者だ。
『やあ、こんばんは。それともこんにちはかな? あ、そもそも挨拶の仕方が違うかな』
どうやってここへ。
『いつかみたいに境界が揺らいでいたからね。…ねえ、きみ。あの子は元気?』
…解って訊いているのだろう。
『……ねえ、なんでかな。ここでならあの子は幸せになれると思ったのに。痛みを忘れて、悲しみを封じて、ここでなら。なのにどうして』
あの者の魂がそれを望んだのだ。
『それを救うのがきみの役目じゃないの、導く神』
いいや、そなたの役目だ。見守りし者よ。
『……あの子の声さ、すごくまっすぐ届くよね。晴れた雪原に響く鈴の音みたい。澄んで、寂しくて、綺麗で。あの子の生まれは雪のない地なのに。そう思わない?』
………。
『だからかな、消えそうな"雪"を追って、自分が…』
そなたはあの者が大切だったのだな。
『自分の世界の魂を大切に思わないわけないでしょ。ま、ボクの仲間たちはその辺けっこう差があるけど』
私やそなたの加護を得ても、あの者の消滅は覆らなかった。あの者は、双炎を手にした者と同じく強固な運命に縛られていたようだ。
『みたいだね。…幸せになってほしかっただけなのに。こんな結末、ボクは望んでなかった』
何をするつもりだ?
『この大陸に何かするつもりは無いから安心してほしいな。…あの子の魂の欠片がまだ残ってる、そこに賭けるよ』
……かの者がそなたに気付けるか…、か。
『そうだね。でもそこはきみが手伝ってくれれば大丈夫。でしょ? 導きの神』
かの者が望むのであれば、な。