【パーティーチャット・さらさらの秘訣】
「あれ? ミトスさんちょっと右向いてもらえますか」
「? こう?」
「ああ、やっぱり。後ろの髪がすごい跳ねてますよ」
「えっ、どこ?!」
「左手をもう少し下に……そこです」
「本当だ、何これすごい。あっ、リリィが言ってた強情な寝癖ってこれか…! ごめんロンド、ちょっと直しに行ってくるね」
「ブラシでしたらありますよ」
「へっ」
「ほら、僕もサザントスさんも自分のブラシ持ってますから」
「…そう言えばそうだったね。サザントスさんと旅して、ロンドが合流して、驚いたのがそこだった。二人とも長くてきれいな髪だから納得だったけど」
「手入れを怠ると凍ったり引っ掛かったりした時大変ですから。えっと…それで、よろしければ僕が整えましょうか」
「え! でも…いいの?」
「はい。今は部屋を移動するのも大変でしょう?」
「それならお願いしようかな」
「お任せください」
「………。」
「…………。」
「…梳かしにくくない? ろくに手入れをしてないから…ごめんね」
「大丈夫ですよ、さらさらで触るのを躊躇うくらいです。ふふ、ここの寝癖のところだけすごく跳ねてますけどね」
「うう、なんか恥ずかしいな、ロンドもサザントスさんも髪が綺麗だから…」
「僕はあなたの髪も綺麗だと思いますよ、晴れた夜空みたいで」
「晴れた夜空……、そんな風に言われたのは初めてだ。…ふふ、恥ずかしいけど、うれしい。ありがとうロンド」
「どういたしまして」
「…ロンド、これを」
「あれ、いいんですか?」
「どうしたの?」
「サザントスさんが使ってる手入れ用の油です」
「寝癖自体は収まったようだからな、それを使って馴染ませておけば再び跳ねることもない」
「えっ、いいんですか!?」
「…二人揃って同じ反応をするな」
「せっかくですし、使わせてもらいましょうミトスさん」
「は、はい…!」
「………。」
「……。」
「……先代の聖火守指長さんが道具を貸してくれて、現聖火守指長さんが髪を梳かしてくれて…。すごく、贅沢だね?」
「今更気付いたのか」
「僕は楽しいですよ」
「あ、明日は寝癖作らないように頑張ります…!」
「その努力が実を結ばなければ、私が梳かすことになるな?」
「なりません!! リリィにお願いします!!」
「呼んだ? ミトスさん」
「リリィ…!」
「あっ? …あー、失礼しました」
「待ってリリィ、何で行っちゃうの!? 戻ってきてー!!」