映画「怪物」
本当の怪物は人間の醜い心だよ! みたいな映画を想像していたんですが、まさかそれを懇切丁寧にやってくるとは思わないじゃん!!
#怪物だーれだ
・見る前の印象
なんらかホラー映画っぽそう。普段の浅村だと多分スルーしてた。
友人氏に「浅村の感想が気になる」とご指名頂いたのでこれを書いてます。
・感想
想像していた以上に面白かった。
でもエグい。
本当の怪物は人間の心だよ! みたいなよく言われるパターンだと思いきや、しっかり理解不能と答え合わせを叩きつけてくるので「まーじで怪物や……」からの「ええ……こいつ人間や……」のどんでん返し。
答え合わせの魅せ方がお上手すぎる。やられたな……という気持ちです。
あと、みんながみんな思ったこと憶測のまま言うので、なんとかしてくれよ! みたいな気持ちはある。余裕のない人間にそんなブレーキは踏めない。
・映画「怪物」 最強怪物ランキング
1位 校長先生
2位 星川君のお父さん
3位 いじめの主犯格
選定不能 星川君
星川君はどこまでやってんの? 駅ビル放火してるなら最強怪物ランキング優勝なんだけども。
・一周目
麦野家。お母さんから見ると学校は間違いなく真っ黒だけど、湊君も正直分からない……というところ。
一周目だけ見てると保利先生がまーじでサイコパスにしか見えない。なんであのタイミングで飴食うの? 校長先生以下先生方は全員botだし。
でも、一周目だけ見てると湊君がなぜ車から飛び降りたのか分からない。「湊君もなんかあるだろこれ……」と感じた。
でも、お母さんがすごくいいお母さんしてる……とは思った。割とまあまあやれることはやってる。でも学校に一度行ってあの対応(説明なしの平謝り)を取られたら、教育委員会や役所の教育科的な所に怒鳴り込むべきな気がする。第三者の目を交えて殴り合わないと。
・2周目
保利先生。どうみてもあれ理系オタクくん上がりの人じゃん……。工学部出てない?
本の誤字脱字を見つけては出版社に報告する性格の悪い趣味はパンピーはやらんのですよ。
なので、保利先生の評価が「サイコパス」から「思ったことそのまま喋っちゃう人」になりました。割と保利先生の人間性を見られたので「いやこの人白確かよ!!」となった。
ざっくり保利先生は良い人寄りだけど絶対に保護者からはウケが悪いと思う。思ったこと口に出るのは致命的なので……。
ただ、その上で、学校がクソすぎたので「あー保利先生人身御供にされてんじゃん……」と思った。結局保利先生はトカゲのしっぽで、状況証拠的に「湊君が星川君をいじめているのでは?」というところしか掴めていなくて、なんとかしろ〜〜〜!!!!! みたいな感じ。
あとから作文見て「湊君悪くないじゃん、星川君とちゃんとお友達じゃん……」と気付いて謝りに行くのはちゃんと出来てる人だな……と思う。
でも悪くないのに悪者になって矢面に立たされたら飛び降りたくもなる。
あと飴のくだりがさらっと出ていて、「辛いときほど肩の力を抜く」をそのままやっちゃったんだろうな……。言葉を額面通りに受け取るのはやっぱり我々の仲間ですよ。工学部にいたよね?
ただ、ここまで見返して、一周目の湊君の発言が訳分からなくなるんですよね。
「お前の頭には豚の脳みそが詰まってる」は保利先生が言ったわけでないので、3周目の話と見返しても「湊君も嘘を付いている?」になる。
そもそも一周目の星川君が証言した「保利先生が殴るけどみんな怖いから黙ってる」も嘘で、かつ「本当に先生からいじめられていたら、あのタイミングでは星川君は証言できない(恐怖で声出ないとかになりそう)」と思うので……。
校長先生と口裏を合わせているか、星川君が相当な怪物なのか?
湊君は星川君と口裏合わせて保利先生になすりつけようとしている様にも思う。そうでないと保利先生にいじめられている、が明らかに矛盾する。
少なくとも星川君の証言は保利先生を一気に悪者にしてしまうので……。
あと、たまたま彼女と現場近くに居ただけでガールズバー通いにされるのは地獄……! 田舎コミュニケーション。因習村じゃん。ほろびろデーモン。
・3周目
星川君。まーじでなんなんだこいつは。
でも分かる事としてはLD(読字、書字)持ってるんだろうな……というのと、おそらくそれを原因に虐待受けてるんだろうなということ。
お父さんおそらく元々は健常者で、雰囲気的には「俺に出来るんだからお前にも出来るだろ」のスタンスを感じるので、これ多分鏡文字書くたびに殴ってんだろうな……。あと、台風の中酒買ってすっ転んでるの、あそこまで行くとおそらくアル中入ってる。
普通に生きていて「息子は怪物、豚の脳みそが詰まってる、だから俺が健常者に導く」とは言わないので、アル中のせん妄なのか元々なんかあるのか……とは思う。そりゃ奥さんに逃げられるよ。
仕事うまく行ってないのかな。初手で保利先生にどこ大出てんの? 教員て給料安いの? って聞くのはかなーり印象悪いけど、コンプレックスの裏返しかもしれないな。
でもここまで書いてみて思えてきたけど、やっぱり星川君やばいような気がする。星川君もどことなく「他人との境界線がなんとなくおかしい」のと「真顔で嘘を付ける」のが気になる。
敵とみなしたら牙を剥く雰囲気があるな……。保利先生が鏡文字指摘した瞬間に雰囲気変わったの、あれそうなのかも。てことはガールズバーに火を付けたのやっぱり星川君?
3周目でようやく「湊君が星川君をいじめている」「湊君が理由も分からず暴れている」の答え合わせが入る。全部星川君を守るためで、かつ「いじめっ子から次のターゲットにはされたくない」が根底にある。
そりゃそうだ。たまたま星川君に向いてるだけで、いついじめっ子の興味が湊君に向くとは限らない。
湊君がお母さんに「保利先生からいじめられている」と話すのも、おそらく「クラス内でいじめられていて、星川君をかばってる」とは言いづらい。だってそれを言うとお母さん動いて大事になるので、いじめっ子のターゲットになってしまうだろうし。彼らは「お前親にチクっただろ」って言うんですよ。
その上で口裏を合わせる方法を考えると「保利先生に全部なすりつけよう」になる……。偶然バカなクソガキの生配信によって保利先生が彼女といるところが映像撮られた。尾ひれがついてガールズバー通い扱いを受けた。暴れたところを止めに入ったら接触して鼻血出させてしまった(これは本当に接触だった)。
都合よく全部が噛み合ってる。保利先生は星川君のトラウマスイッチに触れてしまった。学校も保利先生を生贄に捧げてダメージコントロールしようとした。全部噛み合ってしまった……。
あと、湊君だけはお父さんが真っ当な人じゃなかったって知ってるんだね。お母さんは知ってるのか……いやあの素振りだと知らなさそうだよね。知らん名前の女と旅行行った帰りに事故死したとは。
知ってたら仏壇にケーキ置けないよ。
・好きになった人のことを言えない話
今時の話題、というと語弊があるな……。とは思いつつ。
多様性の話とか、誰に対してどのような感情を抱くのか、という話で。
当事者は星川君と湊君、だと思う。星川君が湊君に近付いて拒絶されるけど、その後で「みんな幸せになれないから好きになった人の話ができない」とこぼすのもそうなんだろうな……とは思う。
多分、この一件を知っているのなら星川君のお父さんは星川君を殴ってる。真人間に戻そうって多分言う。ど、毒親〜〜〜〜〜!!!!!!
なんだけども、子供って無知で無理解なんですよ。大人も無知で無理解ですが。
今の御時世になったって、いじめっ子達のようにLGBTQと「ホモ(同性愛者を差別的に呼ぶ意味合いとして)」の区別が付いていない人はいる訳で。幼稚ないじめ……ではありつつ、彼らかなり用意周到にやってる(先生方に悟らせない)のでたちが悪いな……という気持ち。
それを考えると自分がいじめられることを回避するために星川君を殴らざるを得なくなる湊君……。とも思うし、いやそろそろいじめの主犯格に気付けや大人達とも思うし……。
・校長先生
吐き気を催す邪悪がいるじゃないですか。ここに。
多分ですけどお孫さん轢いたの校長先生本人だと思う。旦那さんは庇ったんだろうな……。
最初から最後まで「このババア……!」が変わらなかった。2周目と3周目の間に面会の下りがあったけど、あれで印象が変わると思うなよ……みたいな気持ち。
でも学校の先生方って事なかれ主義でああいう面倒事大嫌いな人たちなイメージがあるので、まあそうだよな……という風に思う。「いじめはなかった」って奴らは言う。「いやがらせ」はあったとかそういう風に言葉を濁して逃げる。そんなもんですよね。
こう考えていくと保利先生が因習村の犠牲になった感あって辛いな……。
湊君と楽器吹くくだりも「なーにが私も嘘つきじゃこのババア……!!!」となるくらいにはヘイトが高いです。本当のことを言ったら自分の校長先生の椅子がなくなるから怖いだけなんですよ。ハァ〜〜〜怪物怪物。言えない事を音階に載せてんじゃねえ。保利先生だって楽器吹きたいんだぞ。
でも、湊君のお母さんの「私は人間と話してるんですか!?」に「私は人間です」って回答するのはそうだよねとは思う。人間とはどこまでも醜くて薄汚れていて小狡くて浅ましくて生き汚い。どうせそんなもんです。全員自分の立場と名誉が大事! わはは! 校長先生もこの後天下りするんですか?
関係のない話ですけど鬼滅の刃の鬼達の方がある意味よほど人間臭いようにも思いますよね。でもあれは人間の薄汚れた部分ハッピーセットみたいな連中だ。やっぱり生きてちゃいけない存在だ。首を斬ろう炭治郎。
・エンディング
多分ですけど、お母さんと保利先生が電車の中必死に探しても空振りして、工事現場のおっちゃんたちに連れ戻されるんだろうな……と思います。で、湊君と星川君がふらっと帰ってくる……のだろうか。でもあのまま走っていったって生きてはいけない。戻るしかない……星川君をあの家に戻すんですか???
でもふたりともあの学校にはいられないと思う。クラスも教師陣もみんなズブズブに腐ってる。
言っても言わなくても幸せになんかなれないね……。
・総評
今日は怪物について調べてみました!
詳しいことは分かりませんでしたが、怪物とは人の心の事かもしれませんね!
いかがでしたか?
なんて気持ちで観に行った私をどん底に突き落とす、美しさと鬱が混じり合う恐ろしい世界。
でも、誰もが怪物になりうる……とはなんとなく思います。だって我々は結局理性という求肥に包まれた獣なので。野山に混じって吠えますか? おや、その声は李徴子ではないか。
丁寧にネタバラシを受けるとここまで気持ち悪い爽快感に包まれるのか……という感じがありますね。こえー映画見たよ。私はこの映画好きですけど、見直すのは勇気がいるな。
・最後に(私信)
「浅村の感想が気になる」と言って勧めてきた友人氏へ。
面白い映画を勧めてくれてありがとうございます。でも内容が内容なのでつらい気持ちになりました。また面白い映画を教えてください。
こちらから観てほしい映画は今の所「シン・仮面ライダー」くらいなので、他になにかないか探しておきます。