#君たちはどう生きるか キービジュしか前情報わからんうちに観るのもえかろうと思いたって観てきた。だいぶざっくり一言でいうなら宮崎駿監督ともなれば遺書もアニメで描くんだなぁ…と感じた。(何言うてもネタバレになるわこれ)
私はもともと新しい作品を解するために自分の知っている既存の作品を持ち出して考えるという作り手にとってはあまりよろこばしくないであろうクセがある。自分の既知情報のほうが記憶に残りやすくて、どうしても未知の情報(それこそその作品で初めて見るオリジナリティな部分)を理解するのはその後になってしまう。
それを踏まえて観終わった直後のいま振り返るとやっぱり「いままでのジブリアニメのセルフオマージュがいっぱい詰め込まれていたな…」が感想として先行する。
序盤の空襲で逃げる群衆を逆流して走る描写、階段を上り下りする時の手足の動き、おぉ…さすがジブリ…これまで培われたノウハウがあるからこんな複雑なものを描けるんだな…と思っていた。
しかし中盤に行くにつれて既視感…明らかに観たことのないシーンではあるがなぜか観たことあるようなシーンが断片的に表れることが増えてくる。
戦時中の描写や飛行機の部品(かな?)のシーンは「風立ちぬ」、「ポニョ」の魚の群れや生きてるように躍動感のある波の動き、「千と千尋」のようなアクとクセの強い老婆、段階的に形態が変化していく鳥(ハウルの鳥もそうかも)、オールで船を漕ぐ動き、紙人形の猛攻撃、「ハウル」のような毒々しい色合いの豪奢なお部屋や植物園、「トトロ」のかがみこんで狭い通路を通る時の好奇心「カリオストロ」の屋敷の庭の池に断続的に配置されている石のブロック渡り、「ラピュタ」のトースト(今回はバターとジャム)、「もののけ姫」のコダマのような白くて発光するちいさな生き物の群れ、張り詰めた弓の震える弦のきっさきとそれによく似たお前の横顔……などなど挙げていくとキリがない。きっとまだまだある。
どれも構図や動作や話運びは全然違うのに、どこか見覚えのある感覚に陥ってしまう。
「ジブリ飯」「ジブリ泣き」と通称がつくほど定番化しているシーンだけでなく随所がジブリジブリしているのでなんかもう「ジブリ流」を注ぎ込んだ映画なのかもしれない。「あっこれジブリゼミでやったやつやッ!」からだんだん「敢えてこれまでの集大成の詰め合わせで織りなしている」ようにも思えてくる。全部観ているわけじゃないからニワカが何言うとんねんかもしれないが。
「あぁ〜ジブリ(それも宮崎駿作品)といえばやっぱこれよな!こういうのが観たかった!」という観衆の期待を「ファンサービス」として叶えてくれているのか、作風として描きたいもの描いたらこうなるのか、判断しかねるが、「これまでの集大成」と考えるとなんだかしんみりとした感傷も沸いてきた。
あからさまに自分達(駿監督はじめスタジオジブリの人たち)のメタファーでは…?と察せられるような構造もあって。そこは…これは…ジブリのスタッフの人たちどういう気持ちでこれ製作したんだろう…と気になって仕方がなかった。製作陣の感想が聞きたいよいっそ。
限界を迎えて崩落していく塔を見ながら、あぁ…これは駿監督なりの別れの手紙、ようするに遺書なのかもしれないなぁとしんみりしたが、まぁいうて終わる終わる詐欺なのは今に始まったことではないしな…。いつまでも続けてほしいな…続けたいだけ…
「君たちはどう生きるか」のタイトルは私たち観客や登場人物の彼らに対して「君たち」と指してるのかな〜?と思いきやいざ観てみたらスタジオジブリの人たちが今後どう生きるかのが気がかりになったよワイは……スタジオジブリはどう生きるか……
ジブリ映画って全容がぜんぜんわからんままでもわからんのにおもしれぇ…ってただただ怒涛のアニメーション技術に圧倒されるからすごいな……おれはふいんきでジブリ映画を観ている。
たぶん一回観ただけじゃ理解しきれないだろうなーとかおそらく個人的なシュミには合わないだろうなぁとか思いながら、もうとりあえずジブリ流のアニメーションを前情報なし初見で浴びてくるか〜くらいの軽い気持ちで行ったので、もうしばらく頭の中で極上のジブリアニメーション映像をほわほわ漂わせていたいとおもう。
余談:原作クラッシャーのイメージがあるから先に原作は読めないな…と、映画観てから漫画版とか読んでみよかなと思っていたが、作中に出てきた「日本少國民文庫 第五巻」の緑色基調のバージョン装丁がすごくいいな…あれ復刻してほしいな…(作中で使われているアイテムと同じものがほしくなるオタク)
そういえば「あっ これグッズ化しやすそう…」と思うような造形の生き物やアイテムがわらわら出てきて脳内ジブリショップでもう「君たち〜」のコーナーできてた。実際映画館のグッズ売り場にはグッズはおろかパンフさえもなかった(過去作の一般流通してそうなグッズはなんぼかあった)
余談オブ余談:弊垢はエレン・イェーガーがレジェンド推しすぎて森羅万象何を見てもエレン・イェーガー鏡に映さないと脳を介せないまるでだめなオタクのアカウントなんですけども。
「お母さん似の綺麗な顔立ちだけど負けん気がつよくて、周囲になかなか馴染めないけど困っている人は助けなきゃと思えるくらいには優しさも持ち合わせている男の子」という主人公のキャラクター造形にはおもわずにっこり満面の笑顔になってしまいました。