11月26日(日)、ムケイチョウコク『漂流する万華鏡』に登場人物「ト」として参加した時の役としての記憶です。ネタバレ、記憶違い、解釈違い等ご容赦ください。
#漂流万華鏡
#ムケイチョウコク
この日は、家政婦見習いのトキという役をいただきました。
以下はトキとして観た物語(の一部)です。
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名前を捨て、他のすべてをも捨てて、妹と2人だけ逃げ延びてきた。
すがるように出した手紙によって古民家カフェの旦那様に雇ってもらえうことができ、ここにいる。
家政婦の鶴代さんとの面談は緊張したけれど、優しそうな方で親切に接してくださって少し安心できた。
それに、隣にはベニがいる。
歳の離れたこの優しくて利発な妹を、自分は姉妹というより母親のように慈しんできた。酷い環境の中でも、伸びやかに素直に育っていくこの子を全力で守ろうとしてきた。
この日は旦那様のご家族が集まって、難しい相談をなさっていた。そんな中、私たちは鶴代さんについて、その様子を見たり2階に集まる方々にお目にかかったりした。
2階の座敷では人形遣いの先生と、先生が家族と呼ぶお人形たちにお目にかかったりもした。先生と会話する鶴代さんはそれまでの落ち着いた印象と違い、ひとつひとつの言葉に敏感に反応して感情をにじませていた。
もしかしたら、鶴代さんは……。
その答えはすぐにわかった。一輪挿しの花を手に花占いを始める鶴代さんは、心のうちを語り始め、そして意を決したように顔を上げた。
何をしようとしているのだろう。不穏な行動にベニと私も巻き込まれていく。
鶴代さんから、1枚のメモと写真をカウンターに座っている人物、さきほど自己紹介された糸山家のご家族のひとりに渡すように言われた。
写真にはある人の意外な姿が写っていた。
私ではなくベニが鶴代さんに弱々しく抗議する。
「知られることを望んでいるのですか?」
けれど私は、ベニと自分の居場所を守るためなら何でもしようと決めていた。たとえそれで誰かが傷ついても……。
メモと手紙を手渡すと、その人は驚いたように「誰から……?」と尋ねたが、私は言葉を濁してその場をさり、鶴代さんとベニのもとに向かった。
鶴代さんは思い詰めたような表情のままだ。
「お気持ちは伝えられたのですか?」差し出がましいとは思ったものの、聞かずにはいられなかった。
「……とっくに気づいているでしょう」少し苦しそうに鶴代さんが答える。
同じように誰かにメモを渡すように指示されたベニは、鶴代さんの指示に涙を流しながら抗う。それが誰かを傷つけることになるとわかっているから。真っ直ぐで優しいベニ。
それでも、私たちには他に選ぶ道はないのだ。
……そのあとのことは、もう詳しく語るのは忍びない。
鶴代さんを止めるべきだったのかもしれないが、止めることはできない、とも感じていた。
あんなことになってしまったけれど、ベニと私は鶴代さんの幸せを心から祈ってます。
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ネタバレありとは言っても、終盤はさすがにぼかしました。
この日も鮮烈な経験をさせていただきました。
キャスト・スタッフの皆様・登場人物及び黒子でご参加の皆様、そして何よりこの日ともに生きてくれた鶴代さんとベニに心からの感謝を。
本当にありがとうございました。