LB5感想と考察未満のメモ
カルデアに裏切り者がいる、というのは以前から言われていたけれど、記憶が封じられており、まだその人自身、裏切り者の自覚がない可能性。あとソロモン。
※全力でネタバレしてますご注意※
今回、サーヴァントの「記憶」に関する描写に特異なものを感じた。
・ある状況になる、もしくはある地点を通過するまで意図的に情報を忘れる(イアソン他多数)
・それをやる理由を忘れても、ある目的を遂行するまで最適化された行動をとる(コルデー)
・別の自分から記憶情報を引き継ぐ(オデュッセウス、異聞帯ケイローン)
エピソード同士は感動的な文脈で繋がれていても、パーツだけ取ると正直めっちゃくちゃ不穏な設定だ。
ここに「私たちはただそれらしい反応をしているだけかも。私たちのみせるこれは本当の感情かな(意訳)」というアポロンからの問いかけが入る。
話の中では、アポロンの問いかけは「たとえ機械仕掛けの反応でも、それだけ複雑な演算をしていれば本物の感情と同じ」という形で決着がつくし、事実、浮動するロボットそのものになっていた月神アルテミスには1ミリグラムほどの心が残っていて(痛ましい……)、オリオンからの愛の一矢に反応する(泣いた)。
これらから察するに、おそらくギリシャの神性は機械仕掛けだが感情がある。
終盤のパニクりポセイドンなんて人間より人間らしいぐらいだし、アポロンはパリスを矢にすることをややためらい、アルテミスは自己の破壊を悟りながらも無意味な迎撃を加えてしまう。
ここでは「論理的には不合理な行動を起こす」ことが、感情があることのひとつのしるしとして扱われているように思える。
やや例外っぽいのはオデュッセウスと異聞帯ケイローンだが、彼らの場合は合理性を突き詰めて常に相手を上回る行動をとっているはずが、実は汎人類史の自分から与えられた「感情ぬきの、彼らにとっては読み取りやすく活用しやすい――けれども肝心かなめの部分に限ってノリ弁もいいところになっている情報」が足かせになり、逆にいいようにしてやられた感がある。
間違いの渦中にいる者に限って「自分は間違わない」と考えがちだが、それ自体盛大にバグりだした証拠、もしくは誰かの掌の上にいる証拠だということをキリシュタリア様の顔面に1000回ぐらい投げつけたいです。
「人間は間違いを犯す」んだったら人類の一員であるあんたも間違うってことだろうがこの流星投げつけ男め(勝ち目が見えない)。
だが、同時にソロモンのことを考えてしまう。
彼はさも感情があるように擬態できた。表面的にはゆるふわっとした王様、不合理な行動を起こすこともある王様。
しかしその内面は完全な虚無であり非人間、無感情、正しさの奴隷であり長期的な目線で見れば合理性の下僕で自由などなかった、ということが終局特異点とダビデの幕間で説明されたけれども、彼に関する限り、アポロンからの問いかけはまだきちんと論破されていない、終わっていないのではないかと感じる。
「私たちはただそれらしい反応をしているだけかも。私たちのみせるこれは本当の感情かな」
そして、ソロモンと縁の深いシバの女王のバレンタインイベント。
かなりおふざけのニュアンスが強くなっていたけれど、ここで扱われている謎かけは【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】に登場する「限りなく人間に近づいて、感情を擬態することさえできるようになったロボットと、生身の人間を識別するための質問テスト(VK検査)」の問題の引き写しだ。
「あなたは砂漠を歩いている。そこに一頭の亀が現れた。あなたはその亀をひっくり返す。亀は手足をばたつかせるが、起き上がることはできない。けれどあなたは、亀を助けてやろうとはしない。なぜ?」
【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】において、これは答えのない、ただ倫理的にショッキングな問いとして扱われる。
どう答えるかではなく、あわれな亀に感情移入していれば起きるはずの反応(たとえば憐憫、質問者への怒り)を即座に起こせば人間、起こさないならロボット。
「なんの合理性もなくても、傷ついた動物に憐れみを覚えるかどうか」「傍らの存在に対して優しくあれるかどうか」「相手に感情移入できるかどうか」が人間とロボットを区別する標識になっている。
ややこしいのは【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】においてさえ、このテストは「生身の人間だけれども、単に優しくない、冷たい、もしくは感情移入能力を欠いた人間」をロボットと判定してしまいかねないとして問題視されていること。しかも作中におけるロボットは「偽の過去、偽の記憶」を搭載されていることがあり、本人でさえ自分がロボットだと知らなかったりもする。
記憶の有無、そして感情の有無はロボットと人間/機械と人間の線引きにはならず、「もつべき感情の種類」が重視される。
この基準でいけば、憐憫を知らないソロモンは感情的にはロボットということになるだろう。
というか魔術師や英霊の大半がロボット判定を食らいかねない。
(なおバレンタインイベにおいて、主人公はこの問いかけにめちゃくちゃ動揺して意味不明な回答をしていたので、完璧に「人間」として合格だったものと思われる)
では、ソロモンはロボットであり、ギリシャの神たち以上に、不合理な行動を起こす自由は一切なかったとして。
正しい行動しかとれず、個人的な望みなど持つはずのないソロモンが「人間になりたいという願い」をもったのは、本当にエラーだったのだろうか?
まして、ソロモンともあろうものが「人間になって力を全部失った直後に人理焼却の未来を見た(あらかじめその選択のゆく末を見ておかなかった)」なんて、ありうるだろうか?
どうも今回の流れを見ていると、彼の中には
・マリスビリーが聖杯をとり、カルデア創成の未来が固まる
ことをフラグとして起動する特大のキルスイッチが埋められていた――気がしてしまう。
LB5のコルデーがそうであったように、ソロモン/ロマニ自身にとっては自ら選んだつもりでも、実はそうなるようあらかじめプログラムされた選択。
ロマニとしての短い人生を棒に振り、恐怖にかられた過労状態で走って走って走りぬくこと自体が、誰かによって敷かれたレールの上の行動だとしたらどうだろう。
誰だか知らんがばーかばーかふざけんな天と地との間にはお前が予想だにしないことがあるってシェイクスピアもゆってるー!
って気分です。
違ってたらこの振り上げたこぶしをどうしよう。
2部の展開をみるに、カルデアには裏切り者、信用ならない者がいるらしい。
しかし「記憶」と「感情」がある程度任意にロック可能、置換可能なものだということが示されてしまった以上、その裏切り者本人ですら、きたるべき時がくるまで本当は自分がなんのためにここにいるのか、そもそもの目的は何だったのか、なにに使われてしまってるのかを知らない可能性が高い。
つまり現段階では、その裏切り者は誠心誠意カルデアのために尽くしているかも。
主人公のために傷ついたり死ぬことさえ厭わないかも。
本当の血の通った関係性を築いている、と思っているかも。
ところでキリシュタリア様が星をばんばか降らせたあと、通信が途絶していて音声すらまともに拾えなかった、ボーダーの中からは何が起きてるか分からなかったっつってんのに「星辰を降らせるという大魔術の影響」と言ったホームズは大丈夫ですか。
犯人しか知り得ぬ情報の暴露、ってやつではないですか。
無意識のうちに、気づけ、警戒しろ、とサインを出していませんか。
オリュンポスに到達した謎のアーチャー、彼もまたカルデアには信じてはならない者がいると言い、他のサーヴァントからは伏字2文字で呼ばれてましたが、それ「教授」ではないですか。
2部のテーマソング、逆光でしたよね。
今までのところアポクリファ(外典:異聞)ではたいがい敵役だった人が味方をやっていて、そして今回、味方だったケイローンが敵役でしたけど。
かつての主人公エミヤシロウ、のガワを着た村正が、敵に回ろうとしてますけど。
モリアーティが味方で、ホームズが敵というシチュエーションが発生したらどうしよう。
それはそうとギリシャチームにいた伏字5文字のサーヴァントは「ウリクセス」だって信じてます。
旅を掲げるこのゲームで、オデッセイ、「偉大な旅」の語源になった彼がストーリーでやっつけられて本実装されないなんて信じない…………せめてデオンの恨みをこめて殴らせて………………ダイナミック帰宅チャレンジしようよ…………全裸でいろんなとこに打ち上げられてみよう………………故国に愛を………………そんでキルケ―に…………キルケ―………………。
カイニスは私が幸せにする。