阿寒湖編に登場する「食べ物」を三つ並べて比較すると面白いなと思って、少々分析(コミック未収録分のため、追記に詳述)
阿寒湖編で印象的な食べ物が三つある。
この「食べ物」とは、実際に食用にできるかどうかは別にして、「登場人物が口にする・口にすると思ったもの」をあらわす。
桃。
まりも。
繭玉。
この三つが、阿寒湖編で印象的な「食べ物」だ。
まず、桃は、高級品である。寒冷な北海道では当時は生育しない「輸入品」のようなものだ。しかも、栄養価があり、しかも甘い。
それに引き換え、貧乏人の食べ物と勘違いされたまりもは、そもそも藻の集合体で、実体がない。栄養もなく、食べてみれば苦くてエグいだろう。ただし、まりもは人体にプラスの影響を与えないかわりに、マイナスの影響(あったとしても一時的な精神ダメージ程度)も与えない。
そして、繭玉は、関谷が仕込んだ毒薬が入っている。繭玉自体は空疎である。空虚を包含したものが繭玉だ。そこに人体を損なう毒薬が入っている。毒薬を口にするのは、囚人や追っ手のかかった人間、つまり「まともではない」アウトローたちだ。
「食べ物」の充実度、生命活動への寄与具合、食後の影響を評価する。
桃はプラス。
まりもはゼロ。
繭玉はマイナス。
このように分類できるだろう。
まりもは毒にも薬にもならなかったから、誰にも食べられなかったのだ。