ソジウムさんへ インキュバス(リジェネレイト)のキャラスト。全七話。
女達に酌をさせるインキュバスだが、イライラしている。女達にイライラの理由を聞かれると回想に入る。
「あのアガリアレプトとかいう女…ホンマ気に食わんなあ」
「絶対にあの女どもより早くソロモン王とか言うのを捕まえてひと泡吹かせてやろうぜ」
「だがどう捕まえる?」
話し合う三馬鹿。「いい作戦がある」と言うメフィストにインキュバスがそれを任せた時、巨大な幻獣が現れる。慌てて三人は逃げるもインキュバスは躓く。二人は「まだ距離があるから大丈夫。全員で逃げるのが重要」と彼を置いて先に立ち去る。「逃げるのはいいがどこで待ち合わせる」というインキュバスの声も二人には届かない。舌打ちした辺りで回想終わり。
酒場の女に起こされたインキュバス。いつの間にか眠っていたらしい。女達も帰ってしまった。追い出されそうなので「オレの目を見ろ。オレはここで朝まで寝る。わかったな?」とインキュバスは酒場の女に命令するも「うちは宿屋じゃない」と拒否される。力をミスったのか?ともう一度だけ命令してみるも通用しない。酔いのせいで体はうまく動かず、寒い外に追い出されるのも嫌なので、「まだ飲んでる客ならアタシは出ていけとは言わない」と言われた通り、酒を改めて注文する。
閉店後に一杯飲むのが彼女の日課とのことで、強制される形でインキュバスは屈辱的ながらも彼女のグラスに一杯注ぎ、乾杯する。彼女はウィスと名乗った。1話終わり。
後日、インキュバスは同じ店に訪れた。「オレにお酒を注げ」とウィスに命令するも「悪いけど仕事中だから無理。どうしても私にさせたいなら閉店まで待ってね」と断られ、インキュバスは驚愕。試しに他の女に命令すると、女は恋人の男を置いてインキュバスに酒を注ぎだす。結局、インキュバスは閉店までウィスを待った。「美女に囲まれた色男」と言われて「心配しなくても次は(俺の力で)オマエも混ぜてやる」返すインキュバス。だがウィスは「色気とは無縁で生活もがさつな私なんかじゃ物足りない」と自信なさげに言う。「勝手に決めるな。オマエもオレの女だ。混ざる義務がある」と返すインキュバス。ウィスは「アタシの目を見て口説いてくる男は初めて」だと喜び、お気に入りの奇麗なグラスを彼に持たせる。「酒は入れ物が違えば味も変わる。この前より美味しくなるよ」二人は乾杯した。2話終わり。
いい気分はしたが、ウィスを「堕とせなかった」事が気に食わないインキュバス。「オレの力で支配できない女なんていねえんだよ!」気が付かない内にウィスにそこまで執着していた事にイライラする。
改めて同じ店に訪れたインキュバス。「今日で最後だ。今夜、オマエをオレのモノにする」ウィスは笑いながらも、男と一緒にいた女を囲わせていた事に対して「他のお客にちょっかいをかけないようにね」と釘を刺したその時、ガラの悪そうな男(以下ガラ悪)が登場。「オレのダチの女に手ェ出したそうじゃねぇか!」先日インキュバスが酒を注がせた女は男と別れたらしい。「ヴぁイガルドの女はオレの女だ」そう言ったインキュバスにガラ悪が近付くと、「店で暴れるな」とウィスが立ち塞がる。女を殴ろうとしたガラ悪に怒ったインキュバスが手を出そうとすると、またウィスが立ち塞がる。「どけ」と命令するも、やはり効果はない。ウィスの説教でこの場は収まり、ガラ悪達は帰っていった。インキュバスにも注意する一方で、自分のために怒ってくれたことを感謝するウィス。3話終わり。
「インキュバスの来店一週間を記念して…乾杯!」彼の力が通じないまま一週間が過ぎた。力が通じない事も、自分がそんな女と一週間も一緒にいるのかもわからない。「オレと一緒にいて楽しいか?」「オマエはオレのモノにならないままオレと一緒にいる。そんな女は珍しくてな。どういう心境か気になったんだ」とウィスに語る。ウィスは最初、インキュバスをいけ好かない迷惑な客だと思う一方で寂しそうなヤツだとも思ったらしい。インキュバスの周りにいる女達は夢でも見てるようで、インキュバスのことなど見ていないようだと。自分の力に関係なく己の意志で自分を見た女は珍しく、少しインキュバスは驚いた。話は美味い酒、好きな酒、飲んでみたい酒の話に変わり…「インキュバスはさ、『幻の酒』って知ってる?」幻の酒の詳細を聞くインキュバスはいつか辺境のどこかでうまい葡萄酒を飲んだことを思い出そうとするが、結局はうまく思い出せない。インキュバスは話を変える。店に来る女が減っているらしい。ウィスによると、数日前から隣町の酒場にピンク髪と赤髪のイケメン二人組が現れたらしい。その存在に憤るインキュバスだが、ハッとする。別れを告げるインキュバス、会う気はなかったが、当てがあるなら行かないわけにもいかないらしい。改まって、インキュバスは「オレと一緒に来ないか?」とウィスに聞く。断られるインキュバス。ウィスは店を開けたくはないらしい。「次に会う時の酒、期待しておくぜ」店を去るインキュバス。ここで酒場のマスター兼ウィスの父が(ずっと無言だったが)「…お前も言っていいんだぞ」とウィスに言う。動揺するも「彼がまた来てくれるならそれでいい」とウィスは言った。4話終わり
「インキュバスとかいうヤツ、最近見ないよな」酒場の客の男達が噂をすれば、インキュバスが現れた。だがウィスの姿がない。マスターに聞くと「家庭の事情でしばらくはこない」とどもりながら答えた。まあいい。女達に命令すると酒も酒に合う食べ物も一斉に用意してくれた。だがインキュバスの顔は晴れない。女に囲まれていい気分のはずなのに。だが楽しくない。酒もうまくない。(あの女がいないから…なのか?)そんなはずはない。すべての女を統べるオレが、一人の女に影響されるはずがない。イラつきを誤魔化すように今日は飲み明かすぞ!と宣言するインキュバスに酒場のマスターが話しかける。「ウィスの事で話があるが、話しづらい。店の外に来てくれ」インキュバスは頷く。「宴会は後でな」と女達に告げる。「いつでも待ってるからね」と女達は言う。店の外に出た二人。ウィスが来ないのは家庭の事情なんかじゃない。事故に遭ったからなのだ。「頼む、もう時間がない。ウィスに…俺の娘に…今すぐ会ってやってくれないか?」
5話終わり。
傷だらけのウィス。インキュバスが街を出てから、ウィスも色んな街に出かけたらしい。彼に呑ませる酒を探すために。インキュバスが帰ってきた時のために。だが彼女は幻獣に襲われてしまった。「傷口が開くから喋るな」と言うが「明日には話せなくなるかもしれない」、つまり死ぬかもしれないと彼女は言う。「アンタに会えて良かった。これで思い残すことも…」「…ふざけるな!」怒るインキュバス。「オマエはオレの女だ。オマエの命もオレのモノなんだ。オレの許可なく死ぬなんざ絶対に許さねぇ。オマエは生きて…またオレに酒を注ぐんだよ」
「…おい、メシは食えるか?」「…ちょっとだけなら…」「口開けろ、食わせてやる」「うん、ありがと…」インキュバスが彼女に与えているご飯は女どもに作らせたものらしい。後日。熱にうなされ、大量の汗をかくウィス。(ヴィータがメギドより弱いとは知っていたが…こうも違うのか…?)(…待て、オレは今…恐れたのか?コイツの死を…「死とやら」を)(女とただ別れるときの感情とは全然ちげぇ…なんだこの気分は…チッ、考えるほど胸糞悪くなる)クソッ…全部オマエのせいだ…オマエが…死にそうになんかなりやがるから…!後日。咳き込むウィス。ウィスの父が医者を呼んでいる間にウィスを見ているように頼まれたインキュバス。「オレはお前に…何ができる?」「手…握って」言う通りにするインキュバス。ウィスは落ち着いたが、インキュバスはその理由がわからない。(オレはコイツのことを…女を…なんもわかってねぇってか?)街の名医が到着したが、「残念ですが、おそらく、今日がヤマでしょう…」怒るインキュバスに名医は冷静に答える。傷を治すには治療に耐えるだけの体力がいる。だが、もう彼女にその体力はない。辛いのはわかるが、今は彼女としっかりと話を─「うるせぇ!勝手に見限ってんじゃねえよ!ウィスを助ける手段はあるはずだ!」インキュバスは『アジト』のヤツらに彼女の傷を治せる者がいるはずだと考える。例えばバティンなら!アジトに向かおうとするインキュバスをウィスは引き留めた。「待って。…いかないでよ…ここにいて」困惑するインキュバス。「…最期の…お願いだ…たのむ…から…」それ以上喋るんじゃねぇ!と叫ぶ。「…ごめん…よ…お酒…用意する…約束…」「そんなもんどうだっていい!とにかく『もう話すんじゃねえ!』」彼は命令する。「…なに、言ってんの…くちにしなきゃ…伝わらないだろ…アタシ…アンタと会えて…ほんとに…よかったよ…ああ…でも…アンタと…もっと…うまい…酒…飲みたかった…なぁ…」ウィスはその言葉を最後に、もう喋らなくなった。「『目を開けろ…ウィスッ!!』」彼は何度も命令した。6話終わり。
「『起きろよウィス…!』」何度命令しても反応はない。ウィスはもう死んだのだ。「人はこの程度で簡単に死ぬんだ。こんな簡単に死んでしまう生き物だ」と名医は語り「本来であれば、激痛と高熱でもっと早くに亡くなっていてもおかしくはない状態だった。それを今まで耐えられたのはきっと君が付いていたからだと私は思う」名医は去った後、ウィスの父は「娘と別れる時間が欲しいだろ。少し、ゆっくり話をするといい」も部屋を出た。ウィスは最期まで言う事を聞かなかった。「…なあウィス、オマエはオレに何を望む」「『死』がどうした。今からでもオレがオマエにしてやれることはあるだろ?」「そういえば言ってたな、幻の酒が飲んでみたいってよ」だがウィスが言うにはもう造られていないらしい。そうだ。思い出した。昔「あの場所」に…。あの酒は間違いなくうまい。…オレが代わりに飲んでやるよ。それがオレがオマエにできる唯一のことなら…やってやる。「生きていようと死んでいようとオレの女には変わりねえからな。オマエはずっとオレのモノ…オマエの望みもオレのモノだ。」ここでリジェネレイトの音が鳴る。「待ってろ、ウィス。オマエの望みはオレがかなえてやる」7話終わり。