全てを告白した後の54歳田代私が“彼”が生きていたらを問われたとき、顔が上がり開いた目が喜色に染まって眼前の幸せな光景を言葉にするように話している、喜びの滲み出る声で紡がれる内容が
「“彼”がシャワー室で他の囚人に刺されて死ぬようなことがなければ、きっと今も……」で“彼”を喪った事実なのも、表情と声は喜び一色なのに眼だけは涙が溢れて瞳に映っている光景が歪み割れるところも、
“彼”が“私”に与えた影響を否応なく思わせてオタクは語彙力を失いました(賛美の表現)
言葉が途切れた後、はたと正気を取り戻したように顔が逸れ目を落とし現実に戻ってくるんですよ、意識に別離の事実と悲しみが追いついてくる(「いや…、」「こんな話、二度としたくありません」)のはその後
判事の手紙があるのを聞かされて訝しげに左目を眇めた田代私が「死刑」の単語を聞いてやや苛立たしげに強くため息を吐くから前列の人はみんな聞いて
「じゆう……?自由……」「所持品……」手に入るとあんまり思ってなかったものが手に入ってきょとんとしてる……? 歳だからか情緒が摩耗してるからか反応も動きもだいぶ鈍いけど、組んだ指が解けていくのを凝視している反応は情緒がプラスに振れてる感じだったしな……?(驚愕と期待?言うほど期待してはなさそうだけど)
「高校の頃に撮った、彼の写真」で泣いてない?気のせい? 遠目で見てて雰囲気がきらきら儚くなるんだよ
顔を綻ばせて高くやわらかく告げる「待ってたよ!」から最後まで19歳の“私”のように見えるんだけど(たぶん“私”の心の形がそうなのだろうと思っている)、幸せそうな笑顔で告げる「さあ、いいか」「ぼくたち」の長く伸びるイ音がだんだん大きく膨らんでいく様が“あの頃の私”とは別の何かだし、「共犯者」が低くざらつき轟くような音だし目を見開いて顎を引き愕然とした表情のように見えるし、消えていく彼を追いかけて段を駆け上がるときに一瞬、やわく指の丸まった右手が口元に行くし、このペアのスリルミーは絶対ハッピーエンドじゃないんだよな……