スニーキーレッド3
ハルがミサキさんの浮気を疑い詰めるところ昔のハルなら、直ぐにでも暴力に訴えかけていたし、当たり前だったけど対話するというワンクッションが出来たのが、釧路春政が丸くなった証明なんですよね。
スニーキーレッドのテーマは「暴力」で、それは彼等の関係を繋ぐ細い糸だったのを、ミサキさんの「好き」でもう一度繋ぎ直されて、2本の糸が1本になったのが、これまでの話だと考えています。
ただ、先述した通り彼等の関係の糸の袂には絶対に「暴力」が存在してて、ハルはその「暴力」が自分たちの糸の繋ぎ目だと思っている。だから、2巻で「もう殴ってやんねーって言ってんだぞ!」と言えば、ミサキさんが離れていくと思っていたし、「好きなやつのことを気にかけちゃダメかよ」で思わず手を伸ばしてしまう。
ハルは暴力だけがミサキさんを喜ばす、ないし関係を繋ぐものではないと知った。ただ、それは"増えた"だけで、根本的にハルにとって不変的なものではない。
だからこそ、ミサキさんの態度が変わったことや、手錠の領収書なんて見た日には昔のように戻ってしまってもおかしくないのに、ハルは「対話」を望んだんですよ。
これがどれだけ大きな変化なのかって言ったら、丸くなったなんてものじゃ済まされない。自分の価値観を完全にひっくり返されてしまったのに、対するミサキさんが他人事じゃあそりゃハルも舌打ちのひとつやふたつ出ますわ。
1では、ミサキさんにキスするところで「ちっとキビシイな」「できる気がしねぇ」と言っていた男が2を経てめちゃくちゃキス魔になってるんですよ?
自分から触るのはいいけど触られるのは嫌がった男が、はるぅ……♡って呼ばれてちゅ♡ってなんですよ?
釧路春政……惚れがいがある男……
そして、なにより"暴力"というテーマを持った作品で、絶好の暴力チャンスで暴力を振るわないという選択をしたのにハルの成長(?)を心から喜べるっていうのが、たなと先生の漫画の上手さではへぇ~すっごいなぁ……ポイントです。
変化していく二人の関係を丁寧に描いて下さったからこそで、本当にありがとうございます……。今後の未来がハッピーしか見えない……1巻の頃では考えられなかった……一生いちゃいちゃしてろ。
一生といえばですが、この2人がもし、出逢わなかったらを時々考えるのですけど
ミサキさんはハルが居なくても、性癖に気づくこともなく、それなりに幸せに生きていけるだろうなと思います。多分1回とんでもない大怪我とか負いそうな気はしますけど……ぼんやりしているというか、多分本質的にはミサキさんもズレてるんでしょうね。危険を求めたがる思想が強くて、でも自分では常識的かつ模範的であると思ってるから、他者から見た時に一種の解離性が浮き出すような。
ハルは……まぁ、お察しというところで。とにかく、自分を賊害し続ける人生を歩んだであろう想像が出来てしまうのが悲しいですね……。
あの日の邂逅は正しく運命で、お互いにおける最大の転機であるのは、間違いないですが。天の配剤があったら、決して善行を積んだとは言えないハルは、ミサキさんには出逢えなかったから、あの二人が運命で結ばれてくれて良かったです。
不変も愛せたはずの男がつまらなそうに持った、壊れた水槽をかまいもせず、突然じわじわと足元から浸水してきたモノに、全身浸かりながら息をする日々は、彼らの普遍だし不変なんだろうなぁ。
余談ですが、スニーキーレッド3で1番好きなセリフは「ったくよーいつの話をしてるんだが……」です。
ハルがずっと何処かで考えてしまっている、縁の切れ目をミサキさんは全く意識してないし、未来のことばっかり考えてる。
釧路春政は運命に殺されてハルになってたんだから、ミサキさんに責任を取り続けて貰うとしましょうよ。
やっぱり一生いちゃいちゃしてろ!