燕青こと新宿のアサシンさん、原典の水滸伝はどれがおススメですか?と質問を頂いたので、めちゃめちゃ主観入りで纏めました追記からどうぞ!一緒に水滸伝の成立とかにも触れてますので、おススメだけ知りたい方は最後まで飛んでやって下せぇ!
どの本がおススメかの前にちょっといろいろ寄り道するのでお付き合いくださいまし。
まず、水滸伝には70回本と100回本と120回本があります。
基本は100回本で、70回で豪傑108人が揃い残り30回で滅びます。
そんじゃあ70回本と120回本は何なのかというところで、更に横道。
水滸伝は中国の明代に成立した文学です。国の上のほうではなく、市井の人々のパワーや文化が花開きつつある時代。
それ以前にあった歴史・伝承・講談・演劇などなどを、「何かもう有名どこ全部混ぜて軍にしたろうぜ!」という作品。
桃太郎と金太郎とかぐや姫と一寸法師と、あ、あと源頼朝に子孫が居たことにしてそいつ出したろう~みたいなノリです。
実在の人物がモデルだったり、桃太郎と一寸法師が混ぜられて一人にされてたりと闇鍋状態。
※(このモデルが実在してたとか してないとか 人違いだとか、どの作品からどの要素がどう来たのかとか、バラバラの話を繋いだ歪みで目的地がおかしくてファンに方向音痴扱い扱いされてるキャラとかもめっちゃめちゃ楽しいのでどこかで語りたいです)
70回まではだいたい「桃太郎が鬼退治の後金太郎に出会って、金太郎がライコウ様に連れてってもらった京でかぐや姫を仲間に入れて…」というように、創作しつつもともとあった豪傑それぞれのお話を数珠繋ぎにしてあります。
そのため、70回までは一つ一つの話で豪傑にスポットライトが当たった濃いお話、しかも当時の一般人の好むような 後先考えず暴れまわる気分爽快!な話や お上に反抗する者・それに苦しめられる者の話に同情したり、人情モノだったり、といった感じです。
問題は108人が揃ってそれが軍として動いていく70回以降。
それから先の話は寄せ集めの話ではなく、水滸伝を纏めた人の創作になってきます。
水滸伝を書いた人は文字が書けるイコール文人なので、前半のパワーが弱まりいかにも文人らしい体裁になってきます。
また、軍という塊で動くことが多くなり豪傑個人の個性は殺されがちになります。
…さて、それを念頭に最初に戻りますね!
120回本は後世、「108人揃ったのに100回ですぐ滅ぶとか勿体ない!!こいつらが無双してるとこ見たい~~!!」と、108人集合後に20回ぶん彼らがフィーバーしてる話をネジこまれたものです。
日本にはこの時点で入ってきているので、江戸時代に滅茶苦茶流行った水滸伝はこの120回本であります。
なお、当時「留守番に 飯のありかと 水滸伝(留守番には飯と水滸伝さえ与えていればいつまででも大人しく留守番させられる)」と読まれていた程の流行りっぷり。めっちゃ羨ましいワイこの頃に生まれたかった。
一方中国では、「後半だるい~~~」という意見が目立って来ます。
20回いらなくね?っていうかもういっそ滅ぶとこもいらなくね?と後ろをバッサリ切り捨ててしまいます。
これが70回本。中国で水滸伝と言えば今ではこちらのほうがどっちかというとメジャーらしいですね。
108人が集まってめでたし!でもちょっと滅ぶ不穏な夢とか見て飛び起きるよ!おしまい!70回!って感じです。
…というわけで、元々の水滸伝には3種類あります。
もっと詳しく分けることもできるんだけど、とりあえず3種類!
さてではこれを訳していきましょう、という段階で更に今度は訳のやり方で3つくらいにバージョンができます。
おおまかに、対訳・翻訳・翻案。
対訳は、ひとつの単語に対して対応する訳をひとつづつあてはめるようなやり方で、原文に一番忠実です。
ただし、いかにも訳した文というようなカチコチの文にはなりがち。
翻訳は一番メジャーなやり方ですよね。対訳と一番違う部分は意訳かな?意訳もどんどん入れて読みやすくしてあります。
元の文章がどうよりも、どちらかというと意味がしっかり伝わることを念頭にしてます。
そして翻案。訳っていうよりもほぼほぼその作品を下地にしたオリジナル。西遊記に対しての最遊記って言うと多分我々には一番伝わり易いと思う!!水滸伝に対しての幻想水滸伝(1~2あたり)とか。
ちなみに「完訳」は「全文ちゃんと訳したぜ!途中で終わったりしてないぜ!」という意味で、訳のやり方のことではないのでご注意。
さて、お待たせしました!
何回本か、そしてその本がどういう訳をされかたか、ということも踏まえておススメを語っていきますね!
おススメは沢山あるのですが、あんまりドッサリあると尻込みされそうなので、最小限で!
●駒田 信二 「水滸伝」 平凡社 奇書シリーズ(対訳・120回本・上中下巻)
全体をくまなく知りたいのであればこれがベストです。3冊組みのと単行本があるのですが現在の手に入り易さはちょっと不明。
同じ駒田先生の再編集前の状態の文章であれば、同じく平凡社から出ている
●「中国古典文学全集の第10、11、12巻」で読めます。
こっちはだいたいどこの図書館言ってもズラーーーっと並んでると思うから手に取り易いんじゃないかなあ…!
対訳なので、流暢で洒落た言い回しはありませんし、勿論私たちがきのこ文章でドキドキしている叙述トリックなんかもありません。
その代わり、その朴訥とした文章がその時代の真っ直ぐさに似合っているというか、逆にシンプルな文章が「当時」を浮き彫りにさせてくれて物凄く好きです。なんていうか、パワフルです、凄く。スッキリで読み応え。行間の想像の幅も広がるよ!
もしもここから、まずは燕青が出てくるところピンポイントで読みたいですという方がいらっしゃったら 彼が出てる回を全部お伝えするのでご一報ください。
●中国中央電子台「水滸伝 永遠なる梁山泊」(翻訳ドラマ・100回・全45話)
もっと楽に!もっと手軽に!文字を読み続けるのは大変だ、でも基本から離れたくない!
そんなあなたにはドラマです!!!(ドラマもいくつか種類があるのでアマゾンページ載せときますね)
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ドラマと侮ることなかれ。
こちら、基本はしっかり押さえてます。オリジナル要素もちょいちょい入りながらも、無茶はしてません。
そしてまずもう雰囲気!「当時」っぽい雰囲気!!アメリカが日本の江戸時代のドラマ作ろうとしてもどうしても無理があるじゃないですか、あれですあれ。中国が作ったドラマだからこそ再現された「空気感」みたいなものが凄いです。小物とか、衣装とか、生活感みたいなものが。人が生きてる雑多な感じが。
あとですね、中国が人口の多さで殴って来たーーー!!!!って思ったのが役者の雰囲気とか顔とかです。
「ドラマ化する時、あの国の人口ならば演技ができて、武術ができて、しかも顔や雰囲気までキャラクターにめちゃくちゃ似ているという人間を選出できるんだな…どんだけふるいにかけたんだ…」って真顔になりました。凄い。演技だけできるとか顔だけ似てるとかじゃない。なんかもう、纏ってる雰囲気が「ああ~~~分かる~~~~!!!」って人ばっかなのです。すごい。
毎回必ず殺陣の見せ場もあり、飽きさせません。途中で挫折する可能性が段違いに低いです。思い切ってアマゾンで買うもよし、レンタルで見るもよし、図書館での貸し出しにもあったりします。入門ならこちらめっちゃおススメです。
あ、個人的にドラマでのイチオシは、魯智深&林冲です。李逵&燕青も勿論可愛いんだけども!
序盤から活躍するので是非どうぞ。グっと来た方は是非私とお友達になってほしい。
●北方健三 「水滸伝」(翻案・100回?・19巻)
翻案ならもうこれの右に出るものは無いと思う。
再度断っておくけど翻案です。西遊記でいうとこの最遊記とかドラゴンボールです。
キャラクターは下敷きにされてるけど全体のストーリーは全然別物です。
そこだけ覚えておいてもらえれば、堂々と全力でおススメできる。
原作からのアレンジが上手い。話が熱い。真正面からのストレートな文章と男たちの生きざまがこれでもかと胸を打ってくる。
何回号泣したか分かりません。
ちなみに、こっちの燕青とご主人様はめっちゃ良好な関係です。ご主人様も物凄く有能な人だし燕青を重く取り立てて信頼以上のもので結ばれてます。とりあえず、報われてる燕青を見たければこっちから入っても良いと思う。
欲を言えば、アレンジの上手さとか「あー、ここでこれを出すか~!」みたいな妙は原作を知ってからこそなので原作を先に読んで欲しいけど、ここから入って水滸伝への興味を深めてもらってからでも全然良いと思います。まずは飛び込んできて!カモン!
●愚民番外地(レビュー・イラストサイト)http://www16.big.or.jp/~meinai/index.html
ええいどれもこれも長い!もっととっつきやすく!!図書館に行くのももどかしい今すぐ知りたい!!
そう言われたらまずは胸張ってここをおススメします。
サイト管理人はみりん様。
創作水滸伝もお取り扱いの、私の大好きなサイトさんです。(ご本人に許可は取りました)(めっちゃ緊張した)
レビューで各ご本やドラマ・ゲーム・108人の解説を、ファンアートで漫画や解説を載せててくださってワクワクします。
絵が!絵柄がまた!水滸伝に合ってて!人相とか体格とかの描き分けが凄くて、パっと絵を見ただけである程度性格まで分かるような原作の絵への落とし込み方がめっちゃ素敵です。憧れ。小説を読む前に、もしくは読みながら108人絵&紹介をお隣に置いておくと頭の中でごっちゃになりにくいと思います。
サラっと書いてる解説とかが、短くキモをキッチリ抑えてて読みやすく更にクスっとできる、
でもサラッと書いてるちょっとしたことが実は凄い情報と知識の上に成り立ってる、みたいなものが多いので
初心者に優しく経験者にも楽しいサイトです。
孟康への「大型弩弓の名手らしいが設定だけで実際使ったことがないぞ!」ってツッコミとかケラケラ笑ってたんですけど、ふと「…登場シーン全部把握して覚えてるんだ…ひょええ…」ってなったり
「古今東西 楊志さん列伝」のページの中央電視台ドラマのとこのツッコミで爆笑してからおもむろにドラマを見直し「…ホントだ、ここ居るわ…」と真顔になったり、何かもうほんと凄くて楽しいぞ!
あ、管理人のみりん様の一押しのご本は「岩波少年文庫版松枝訳」、キャラは「飲馬川チーム」ですこちらもよしなに!!!(ダイレクトマーケティング)
以上、めっちゃ冗長な水滸伝入門おススメご紹介でした!!!!
ものっそい趣味に走っているのでベストな回答ではないと思いますが…!!
ちょっとでも興味もって手にってもらえたら、この世界を知ってもらえたら本当に滅茶苦茶嬉しいです。
どこからでも良い、飛び込んでおいでよ水滸伝沼!!!!!!!!!水のほとりなだけ沼ってな!!!!!!!!(うまくない)